2003年3月14日(金)「しんぶん赤旗」
JR東日本の広告掲載基準に反した未来書房の車内中づり広告はどんなルートで持ちこまれたか。
「JRの中づり広告は簡単に出せるものではない」と語るのは都内の広告代理店社員。
「とくにISBN(国際標準図書番号)を獲得したばかりの未来書房のような一見(いちげん)さんが広告を出すのは非常にむずかしい。初取引でいきなり二、三千万円の広告を出すのは特別の事情があるはずだ。何かの保証や裏があるのか、それとも大金を前金で積んだのか…」
調べてみると、JR東日本の広告を扱うジェイアール東日本企画に広告を持ちこんだのは未来書房でも、海野(うんの)安雄同社社長でもありませんでした。
広告代理業「オリコム」(東京・港区、永井秀雄社長)。中堅企業です。オリコム社に聞くと、さらに経路は複雑でした。同社の担当部長が説明します。
「私たちも未来書房から直接、依頼を受けたわけではない。間にもうひとつ代理店が入っている。そことの信頼関係でやったことです」
では、その代理店とは──。取材班が未来書房を名誉棄損で告訴・告発したことを説明しながらさらに質問しました。担当部長は「検討させてほしい」と留保。その後、こんな回答が返ってきました。
──当社に広告を持ちこんだ代理店に、取材を伝えたが「断ってほしい」といってきた。その代理店は、「いまの状況で話すことは何もない」ということだった。したがって名前をいえない。
徹底した正体隠しです。不自然なのは車内広告だけではありません。実績のない出版社が出版取次の日本出版販売(日販)と簡単に取引すること自体が業界常識では不可解です。
取材班が入手した日販の内部資料に「新規取引・社名変更出版社受付連絡票」という書類があります。日販が新規取引する会社の概要を示したものですが、「紹介者名」欄は空白でした。業界関係者がいいます。
「新規取引には通常、紹介者がいる。それを必要としないのは大きなバックがあるから。創価学会系企業の特徴だ」(つづく)
(2)鳩レース会社変身の裏で
(3)潮出版社に頼まれた
(4)創価学会人脈と裏事務所
(5)4つの名前をもつ男
(6)販売より広告自体が目的
(7)広告基準に反している
(8)中づり広告、背後に…
(9)製本所は長野だった
(10)未来書房社長の素顔
(11)問われるべきは、だれか