2003年3月11日(火)「しんぶん赤旗」
海野安雄。
宇野善哉。
宇野文集。
海野靖雄。
北朝鮮問題を利用して日本共産党の名誉を棄損し、著作権を侵害した未来書房の海野社長は、取材班が確認できただけでもこれだけの「名前」を持っていました。
最初の「海野安雄」という名前は、未来書房の会社登記で、代表取締役として使われたもので、公的なものです。
次の「宇野善哉」と名乗る人物に「取材された」という証言者がいます。
京都府内に住む安東尚美さんです。
安東さんは、二〇〇一年参院選挙で白川勝彦元自民党衆院議員が代表の「白川新党」に参加しました。選挙後に、政界情報誌のライターから「白川新党について教えてほしい」と依頼があり、取材を受けました。「白川新党」は創価学会・公明党を批判しており、このライターは自分が“創価学会寄りの記事”を書いているという趣旨の話をしたといいます。
それからまもなくの同年秋、今度は「宇野」から、「社民党の辻元清美議員(当時)と『赤軍派』について聞きたい」という取材依頼があり、会いました。辻元前議員は小選挙区で公明党候補を落選させています。
このとき「宇野」は、「未来書房を経営し、ライターをやっている。本はインターネットで売っている」などと自己紹介。白川新党のことを取材にきた政界情報誌のライターとも「親しい」と語りました。
名刺には「宇野善哉」という名前と連絡先が書かれ、さらに、別途、連絡先として名刺の裏に「未来書房」の名前と電話番号を書き込みました。この電話番号こそ、東京都立川市幸町の公団住宅の一室にある未来書房「本店」の電話番号でした。
本連載2で、未来書房の「本店」=海野宅の表札に、「海野 未来書房 宇野事務所」と書かれていたことを紹介しました。この「宇野」とは海野氏の別名でした。海野氏は、今回の本を発行する以前から、「未来書房の経営者」「フリーライター」として活動していたのです。
冒頭紹介した「宇野文集」、「海野靖雄」という他のふたつの名前も「未来書房」の肩書で使われていたものでした。
それにしても、あるときは社民党、あるときは日本共産党をねらう──。名前を変え、創価学会・公明党の背後関係も隠してうごめく海野氏の活動は謀略という言葉がぴったりです。
とくに今回の日本共産党攻撃には念が入っていました。未来書房は、過去の活動でもやったことがない、ISBN(国際標準図書番号)の登録を、昨年十一月、初めておこないました。大量に流通させるためです。本紙編集局に寄せられた出版取次大手、日本出版販売(日販)の昨年末の内部資料には、未来書房について「創価学会関連書籍を中心に刊行予定」としるされていました。
海野氏のような人物を使った創価学会・公明党の大がかりな作戦のカラクリがいま明るみに出てきました。(つづく)
(2)鳩レース会社変身の裏で
(3)潮出版社に頼まれた
(4)創価学会人脈と裏事務所
(5)4つの名前をもつ男
(6)販売より広告自体が目的
(7)広告基準に反している
(8)中づり広告、背後に…
(9)製本所は長野だった
(10)未来書房社長の素顔
(11)問われるべきは、だれか