浄水場売却で喜ぶのは
「こんなところに浄水場を置いておく必要はない」。橋下徹市長のこの一言で大阪府市統合本部会議(1月25日開催)は、大阪市で一番古い(1914年完成)「柴島(くにじま)浄水場」の廃止方針を決めました。
柴島浄水場はJR新大阪駅の南東800㍍に位置し、面積は約50㌶(甲子園13個分に相当)と広大で、阪急京都線4駅にほぼまたがっています。
敷地内には、赤レンガと御影石の調和が美しい水道記念館があります。橋下市長は、廃止の先取りといわんばかりに4月1日から同館を閉鎖しました。古い配水ポンプなどの展示があり、小学生の社会見学に支障が出ています。
負担2千億超
「大阪維新の会」府議団・大橋一功政調会長は昨年7月14日、柴島浄水場の立地場所を「非常に利便性の高い、有効活用が有望視される土地」と発言。浄水場廃止で不要となる施設更新費990億円と、用地売却収入320億円を合計すれば、「1310億円の削減効果がある」との試算を公表しました。
府市統合本部は跡地を「集客魅力向上」に役立てるとし、同本部関係者は「跡地再開発となれば、民間活力が発揮され、大阪経済にプラス」と期待に胸を膨らませています。
しかし、大阪市水道局は、浄水場廃止に伴う施設撤去や配水管の再敷設などで2700億円が必要とし、その費用を外部から借り入れれば利息が1000億円となり、合計3700億円の費用がかかると指摘しています。
「地下に埋設したものは多い、完全撤去にはもっとお金がかかるはずだ」と、水道局関係者はいいます。
支出は3700億円で、廃止効果額は「維新」の試算でも1310億円です。差し引き2390億円は大阪市の負担となります。
日本共産党大阪市議団の北山良三団長は、「借金を返すのは大阪市。売った土地は大手ゼネコンが開発事業でもうける仕組み」と強調します。
「二重の備え」
「安全面でも柴島浄水場は必要」と語るのは、日本環境学会会員・近畿水問題合同研究会会員の中村寿子さんです。
最近の水質事故としては、利根川水系でのホルムアルデヒド検出による35万世帯の一時断水(5月19日発生)があります。
中村さんは「この事故は『二重の備え』の重要性を示した」と指摘します。一つは上流の監視態勢、もう一つは川の両岸に浄水場を配置することです。
「淀川の水は、流れとは垂直方向には混合しにくく、たとえ片側で水質異常が発生しても、他方に影響が及びにくい傾向があり、影響を受けない浄水場からの水の応援が可能になります」
淀川には現在、左岸に2カ所、右岸に1カ所の浄水場が設置されています。中村さんは警鐘を鳴らします。
「右岸に1カ所しかない柴島浄水場を廃止することは、危険回避の手段を失うことになります」
(「赤旗」2012年7月7日付)
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