校長権限強化に固執
大阪市議会は5月定例会で、教育関連2条例の一つ「学校活性化条例案」を継続審議にしました。同条例案は、①学校選択制②校長の原則公募③学校協議会の設置などを定めています。
継続審議の大きな理由は、与党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)が教員向け手当の"校長査定権"を認めよと修正を求めてきたことです。
昨年否決された「維新の会」の「議員提案条例案」では、校長による教員評価をボーナスや勤勉手当に反映させることを教育委員会に課していました。
5月議会の「学校活性化条例案」は橋下市長提案ですが、市長自身が「(勤勉手当査定権を)公募校長の組織マネジメントの武器にしたい」と修正に固執しています。
橋下市長は知事時代から、「校長は組織のマネジャー。組織である以上、校長の権限強化は至極当たり前の話」(2011年5月9日府戦略本部会議)と主張。校長の人事権、予算権、職員会議に縛られない学校の意思決定権の強化など上意下達の学校運営をおしすすめてきました。
相対評価狙う
保護者の意向を学校運営に反映させるとした学校協議会をめぐっても橋下市長は、教員の相対評価(5段階)導入につながる発言をしています。
「原則は相対評価でいきたい。学校協議会ができれば絶対評価でいいが、その設置を押しつけてはいけない」(4月25日の市議会文教経済委員会)。学校協議会ができなければ相対評価を導入する考えです。
5段階相対評価の分布は上から、S5%、A30%、B50%、C10%、D5%で、校長が決めます。
「ベテランと新人教員を同列に置いて評価できるのか」「先生が子どもより校長の顔色をうかがう」といった批判が保護者からもあがり、教員については府市ともに相対評価導入をやめました。
学校協議会の委員には保護者や地域住民も就き、「指導が不適切な教員に対し校長が講ずべき措置について校長に意見を述べる」任務もあります。
絶対評価ではCとDはゼロというケースも考えられます。保護者など外部のチェックが入れば、「絶対評価を継続しても、D評価も付き、競争が起こる」との目算が「維新の会」にはあるようです。
「なじまない」
元大阪府小学校校長会会長の西林幸三郎さんは「校長公募は、民間の経営論理を学校に入れることを期待してのもの。競争と効率を重視し、"役立たずの人間は切り捨てる"。こんな論理は、教育には最もなじまない」と語気を強めます。
「勤勉手当査定は校長一人の恣意的な作業ではありません。これは教育現場を知らない者が考えつくこと。効率性だけを考えて、教育実践の経験もない一部の民間人校長に査定されては、現場はたまったものではありません。職員会議を大切にし、みなと話し合いながら、一人ひとりの教員を輝かせることこそ校長の仕事です」と西林さんは語ります。
(「赤旗」2012年6月28日付)
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