保護者の声を発信
大阪府での府立高校の「学区撤廃」とともに、大阪市で橋下徹市長が2014年度から導入を掲げているのが、小中学校での「学校選択制」です。
大阪市議会では5月、「市教育行政基本条例案」が「大阪維新の会」と公明党の賛成で強行可決されました。一方、学校選択制を押しつける「市立学校活性化条例案」は、市民世論と運動に押され継続審議中です。しかし、橋下氏は強引に準備を進めています。
4月26日、市役所で1回目の「熟議『学校選択制』」(市教育委員会主催)が開かれました。
黙殺させない
保護者の代表として公募委員になった大前ちなみさん(40)は「導入するとしたらどういうものにするかを決めるための会議だったので驚いた」と話します。
この日、市教委側が導入のメリットとしてあげたのは「特色ある学校づくり」や「学校の活性化」など。一方で課題としては、制度を廃止した群馬県前橋市や東京都江東区などの事例から「学校と地域の関係の希薄化」「特定の学校への児童生徒の偏り」「通学区域外から通学する児童の安全確保」があげられました。
大前さんはいいます。「各区での説明会でもそうでしたが、メリットといっても他都市で導入前に言われていたものと同じ。実際に教育が活性化したという報告ではありません。一方、デメリットは導入後に実際に起きた弊害です」
大前さんは今年2月、橋下市長が「学区撤廃」について「圧倒的多数が望んでいる」と発言しているのを知り、「保護者の声が黙殺されてしまう」と危惧。数人の保護者で「発言する保護者ネットワークfrom大阪」を立ち上げました。ツイッターやブログ、会見などで保護者の声を発信し、現在、会員は80人以上に増えています。
大前さんが懸念しているのは、橋下氏が学校選択制について「(学校を)保護者の選択にさらして自然に統廃合を促す手法」と明言してきたことです。
「結局、選択制も学区撤廃も、『選ばれなかったのは学校や地域の責任だ』として、なかなか進まなかった学校の統廃合を進め、公費を削減するのが目的なのではないでしょうか」―。現に市立小学校は3分の1が統廃合の対象とされており、府立高校についても3月の府議会で「維新」の議員が、113校ある全日制高校(工科や農芸などを除く)を70校に絞り込むのもありだと質問しています。
市民で熟議を
大前さんは指摘します。「私たちが望んでいるのは少子化の時期を好機として少人数学級を進めることです。それを敵視してきたのが橋下さんたちです」
大前さんたちはいま、7月16日に大阪市内でワークショップ「学校選択制 市民熟議」を開催する準備を進めています。
「私たち保護者自身がまず問題を知ることが大事だと思っています。その上でつなげる手をつないで教育をよくする力にしたい」
大阪の教育破壊を止めるのは草の根のたたかいです。
(おわり)
(第2部は豊田栄光、藤原直が担当しました)
(「赤旗」2012年6月29日付)
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