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第12回府市統合本部会議で「日本の近現代史を学ぶ施設」建設構想を打ち出した橋下市長(右)=5月29日、大阪府咲洲庁舎

「靖国史観」を大阪から

 「日本全体で一番必要なことは、子どもたちに近現代史の教育を与えることだ」。5月下旬の府市統合本部会議。強権政治をすすめる司令塔で、橋下徹大阪市長は近現代史教育施設づくりの構想をぶちあげました。

歴史教育に異

 いまなぜ近現代史教育施設か。「中国や韓国がいろんなことを日本に言ってくるのかの根本を知らないと…僕は日本のいまの近現代史に大いに不満を持っている」「こんなことをやっていたら、日本の国をしょって立つような人材は育たない」

 別の場ではもっと露骨です。「学校の現場は育鵬社の教科書は全然採択しない。育鵬社の教科書とかの考え方もしっかり子どもたちにださないといけない」

 育鵬社などの「新しい歴史教科書をつくる会」系教科書は、太平洋戦争が「アジア解放」「自存自衛」を目的にし、“日本は正しい戦争をやった”という、ゆがんだ歴史を子どもたちに教え込もうとする意図があります。

 橋下氏は、施設づくりも「つくる会」系メンバーに協力を求めると公言しています。

 「橋下市長は、靖国神社の展示館『遊就館』の大阪版をつくろうとしている」。中学校で社会科を教える教師は声を強めました。

 「橋下さんのいう『日本をしょって立つ人材』というのは、黙って働く、戦場へも赴く“忠実”な若者です。施設見学を学校教育の一環として義務づけることもやりかねません」と指摘します。

安倍氏に酷似

 これらの動きは、かつて安倍晋三内閣が“美しい国”の名でアメリカと一緒に戦争する国をめざしたときとよく似ています。

 橋下氏が代表を務める「維新の会」の「教育基本条例」案を発表した記者会見で、坂井良和市議団長は「戦後レジーム(体制)からの脱却を大阪から」進めると表明しました。

 「戦後レジームからの脱却」は、安倍氏が多用していた言葉。戦後日本が守り続けてきた憲法の平和原則や民主主義を戦前の「国体」に反すると総括するものです。

 安倍氏も2月、大阪で開かれた日本教育再生機構の集会で、「維新」の教育基本条例を「私たちの方向とまったく合致している」と持ち上げました。

 15日、野田民主党政権の閣僚が靖国神社を参拝して世界を驚かせましたが、橋下氏は知事辞職直前の昨年10月、靖国神社と関わりが深い大阪護国神社の秋季例大祭に知事として40年ぶりに正式参拝しています〈日本会議大阪事務局発行『日本の息吹(大阪版)』11年12月号〉。

 日本教育再生機構の八木秀次理事長は、「維新八策」の教育「改革」が「事実上、自虐史観からの脱却を目指したもの」「保守本流たる安倍氏と維新の会は思想的に気脈を通じている」と評価しています(『SAPIO』5月16日号)。

 次期総選挙に向け、橋下・「維新」が新党を準備し、安倍氏に参加要請していると一般紙(「朝日」15日付)が報じました。安倍内閣がなしえなかった「戦争できる国」を橋下氏がタッグを組んで推進しようとしています。 (つづく)

(2012年08月17日付)

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