"絆"壊し「我慢ならん」
「あら。お元気ですか」「元気、元気!」―。5月26日、大阪市生野区の「生野会館・老人憩の家」に、近所のお年寄りが、ゆっくりとした足取りで集まってきました。月1回の「ふれあい喫茶」です。
コーヒーでもぜんざいでも何でも100円。お年寄りや幼い子を連れた母親など、2時間で約100人もの人が立ち寄り、終始笑い声が絶えません。
経費持ち出し
地元の町会長の1人、船越康亘さん(69)はこう話します。
「老人憩の家でやるような行事は、迎えるのもみんなボランティア。経費もほとんど持ち出しですわ。でも、やるほうも来るほうも楽しみにしているんです」
こうした行事は、大阪独特の自治会組織「大阪市地域振興会」の町会などで構成する地域の社会福祉協議会(社協)が、老人憩の家で開催してきました。
しかし、いま橋下徹市長(「大阪維新の会」代表)は、こうした地域の絆づくりの活動をズタズタに切り裂こうとしています。
現在、橋下市長が策定を進めているのが「市政改革プラン」。市民サービスを3年間で488億円もカットする全世代にわたる攻撃です。素案(5月11日公表)では、老人憩の家の運営補助(1カ所年間43万8000円)の半額補助への見直しを提示。当初の試案では廃止まで掲げていました。
船越さんはいいます。
「『老人憩の家』といっても、小学校区に一つを基本として市内に372カ所あるコミュニティーセンターみたいなものですよ。そこの日常的な維持管理・運営費まで削るなんて、橋下さんはコミュニティーはいらないというのでしょうか」
2万の声殺到
「市政改革プラン(素案)」には、5月11日から29日まで意見公募(パブリックコメント)が行われました。意見は2万件近くに及び、市で同制度が始まって以来の殺到ぶり。「大半が反対や現状維持を求める内容だ」(市政改革室)といいます。
「維新の会」を応援してきた別の区の社協幹部はこう話します。
「今回の『改革』案はほんま青天の霹靂ですわ。地域で支えてきた福祉を一律に切るようなとんでもない話になっている。いくら『維新の会』といえども我慢ならん。地域団体の人たちはみんな怒っているがな」
ある町会長はいいます。
「地域振興会への財政措置も凍結したり減らそうとしたり。橋下さんは、市長選で相手方を応援した政治団体だとみなしたものはつぶすつもりです。しかし、大事なのは振興会の自主的な発展を保障することですよ」
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大阪府・市の「改革」をすすめ、国政進出まで狙うようになった橋下「維新の会」。その反動的な正体と逆流に立ち向かう人々を追います。
メモ 「大阪市地域振興会」は、戦後早くに結成された「大阪市赤十字奉仕団」が母体。市内約4000の振興町会の連合体で、町会はおおむね小学校区ごとに連合振興町会に束ねられています。同じくほぼ小学校区ごとに組織されている地域社協は、町会やPTA協議会、老人クラブなどさまざまな団体によって構成されており、連合振興町会の会長が地域社協の会長を兼ねるケースも少なくありません。
(「赤旗」2012年6月6日付)
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