高齢者の楽しみまで...
橋下徹大阪市長の「市政改革プラン(素案)」に対し、地域社会福祉協議会や振興町会関係者が憤る理由の一つが、「食事サービス事業(ふれあい型)」の補助縮減・廃止です。
一人暮らしのお年寄りらに声をかけて「老人憩の家」などで温かい食事を提供する事業で、40年もの間、ボランティアによって支えられてきました。お年寄りの安否確認や閉じこもりの防止、仲間づくりなどに大きな役割を果たしています。
指折り数えて
高齢者を含む世帯のうち単独世帯の割合が41・1%(全国24・8%)と高い大阪市で、そのうち約17%の約3万1000人が利用し、ボランティアも約1万4000人というまさに草の根に息づいた"絆"の事業です。
「みんな楽しみにしてね。月何回かのその食事会を指折り数えて待ってんねん。1時間も前から来て座っている。ボランティアに感謝しながら、喜々として食べています」
ある地域社協の会長は事業のことを、目を細めながら語る一方、「市政改革」への怒りを隠しません。
「ここにつけるわずかな補助金まで削りますか。市改革プロジェクトチーム(PT)は一度でも現場を見に来いといいたい」
PTだけの問題ではありません。1食あたりの市の補助が250円で、本人負担が300円なら550円分の食事になるというこの事業について、橋下市長は「僕、知事時代に280円の弁当でしたんで」「550円、結構いい値段ですよね」などと発言。知事時代公用車でのジム通いが問題になったことなどどこ吹く風で、補助縮減・廃止を"正当化"しました。
前出の社協会長は指摘します。
「銭金の問題じゃない。『市がそこまでコケにするんだったらもうええわ』とボランティアが離れていったら、地域福祉なんて根底から崩れます。福祉には聖域を設けて手をつけないのが当たり前の政治やないですか」
推進員補助も
「市政改革プラン(素案)」では、さらに地域福祉の事務局機能を担うネットワーク推進員への補助まで廃止しようとしています。
同推進員は、地域の人が専門的な研修を重ねて担う職務で、老人憩の家などを拠点に、地域のお年寄りの実態を把握し、日常的に支援にあたっています。
「地域のみなさんはカンカンですよ。推進員の手当を切って輪番でやればいいといいますが、何をやっているか知っているのでしょうか。夜中に一人暮らしの高齢の方が運ばれるとなれば、その救急車に乗って、朝まで付き添う人たちですよ」―。福祉保育労大阪市社協分会の篠崎ゆう子書記次長(46)=淀川区社協ボランティアコーディネーター=は憤ります。
篠崎さんらが加わる「大阪市の地域福祉を守る会」は5日までに地域福祉を守る陳情署名を約1万2千人分集めました。
篠崎さんはいいます。「地域福祉のネットワークが壊されるんじゃないかと心配。たたかいはこれからです」
(「赤旗」2012年6月7日付)
[目次]