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2024年9月22日(日)

国、被爆体験者訴訟 控訴へ

長崎 原告怒り「裏切られた」

 長崎に投下された原爆により被爆したにもかかわらず、国が定める被爆地域外にいたために被爆者と認められない「被爆体験者」が被爆者健康手帳の交付を求めていた訴訟の控訴期限を前に21日、政府は控訴する方針を表明しました。原告からは「裏切られた」などの怒りの声があがっています。

 「被爆体験者」とされた原告44人は2018年、被爆者援護法に基づく救済を求めて長崎地裁に提訴。今月9日の地裁判決では、被爆指定地域外でも「黒い雨」が降ったと認められた地域の15人を被爆者と認め、残る29人については訴えを退けました。

 控訴理由について、武見敬三厚生労働相は「司法判断の根拠に対する考え方が、最高裁で確定した先行訴訟と今回の判断では異なるため」としています。

 また、岸田文雄首相は21日、長崎県の大石賢吾知事、長崎市の鈴木史朗市長と対応を協議。「被爆体験者」について、被爆者と同等の医療費助成を行う事業を創設すると述べました。すべての「被爆体験者」を対象とし、精神疾患の発症を要件とせず、精神疾患に関連する限定的な疾病に限らず、幅広い一般的な疾病についても適用するとしています。

 被爆者援護行政を研究する田村和之広島大学名誉教授は「被爆者援護法の外で援護事業を拡大しても救済にはならない」と指摘しました。

「私たちは被爆者」 原告団が会見

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(写真)会見で訴える(手前右から)岩永、山内の両氏=21日、長崎市

 長崎の「被爆体験者」訴訟で、原告の一部を被爆者と認めた長崎地裁の判決を巡り、政府が21日、控訴する方針を表明したことを受け、訴訟原告団や支援者は同日、長崎市で記者会見を開きました。

 原告団長の岩永千代子さん(88)は「私たちはお金が欲しいわけではない。国の医療費の拡充策などいりません。結構です。あまりにも不合理で人権を無視している。被爆者に対しての国、県、市の考え方が間違っている」と憤りの声を上げました。

 同じく原告団長の山内武さん(81)は「また差別をしやがる」と怒りをぶつけ、「被爆体験者も被爆者だ。12キロ圏内にいて放射能の影響を受けるようなところにいた。これだけで被爆者じゃないんでしょうか」と訴えました。

 国の表明を受け、長崎市と県は控訴を決めました。岩永さんは「勝訴した人たちの中には91歳の人もいる。家族にがんだとか白血病が多い。そんな人を控訴するなんて本当に不可解。なんて言っていいかわからない」と不信感をあらわにし、山内さんは「知事と市長は、私たちの再三の申し入れを無視して、控訴に持ち込んでしまった。とにかく腹立たしい」と語りました。

 今回、勝訴した原告の女性は「勝訴の判決を認めてもらいたい」と声を振り絞りました。

 原告団は29人の敗訴を不服として控訴する方針です。