2024年8月17日(土)
きょうの潮流
パリ五輪から帰国したメダリストの動向が各種報じられていますが、期間中のテレビ番組には違和感を覚えました。ほかの国と比較した順位表を見せながら「日本の獲得したメダル数は…」との放送に、思わず画面に向かって間違ってる!と▼国際オリンピック委員会(IOC)が採択した「オリンピック憲章」ははっきりこう規定しています。競技大会は「個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」▼しかし、メダルの授与やサッカーの試合前などに「国歌」が流され「国旗」が画面に映し出されます。その圧はいかほどか。例えば、柔道の男女混合団体の決勝で敗れた阿部一二三選手は「日本のみなさんに本当にすみませんという気持ち」と謝罪を口にしました。本来、そんな必要はないのに…▼一方、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の後押しで参加した「紛争や迫害により故郷を追われた難民アスリート」で構成する「難民選手団」。団として初めてのメダルとなったボクシング「女子75キロ級」での銅メダルの快挙を、テレビはどれだけ伝えたのでしょう▼1964年の東京オリンピック・マラソンで銅メダルの円谷(つぶらや)幸吉選手が、ケガに苦しみ成績不振に悩み、次のメキシコ大会前に「疲れ切ってしまって走れません」と遺書を残し、27歳で自死した例もあります▼時代や人の価値観が違うとはいえ、悲劇は繰り返したくない。マスメディアの役割は、自国の優位性を強調することではないはずです。