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2023年1月7日(土)

憲法ルポ 沖縄・うるま

「敵基地攻撃能力」配備計画

「基地は抑止力にならない」

市民有志が「会」 「命守れ」の輪 一歩ずつ

 「今、憲法9条という言葉が出せないほど追い込まれ、戦前ではないかとの切実感がある」。沖縄県うるま市在住の50代女性はこう訴えます。同県名護市の辺野古ゲート前でも60代の女性が「また沖縄が戦争に巻き込まれる」と怒りを込め語りました。今、県内各地で戦争への危機感が高まっています。(田中智己)

近隣には学校

 政府は、県中部に位置するうるま市の陸上自衛隊勝連分屯地に12式地対艦誘導弾を配備する計画です。同時に同誘導弾の能力向上も予定しており、沖縄本島では初となる「敵基地攻撃能力」の配備となります。住民が戦争に巻き込まれることへの危機感を持った市民有志が昨年11月28日、「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」を創設しました。

 同会共同代表の照屋寛之・沖縄国際大学名誉教授は、地対艦誘導弾配備など「抑止力」を高めようとすれば、軍備と軍備がエスカレートしていく一方だとして「軍備増強しながら平和を実現していくことは不可能だ。いままでの歴史が証明している」と述べます。

 勝連分屯地には、原子力潜水艦の入港可能な米海軍基地ホワイトビーチが隣接。分屯地からわずか160メートル先には与勝高校・緑が丘中学校などがあり、周囲は住民地域と密接した地域でもあります。照屋氏は、戦争が起きた場合、住民が巻き込まれると分かりながらの配備は人道上からも許されないと憤ります。

 「近くには嘉手納や普天間基地もある。『台湾有事』になれば、この県中部一帯が戦場になる危険性は高い。基地があることは決して抑止力にはならない。平和を作り出すには外交しかない」

 市民の会は、昨年末にうるま市へのミサイル配備が報道されて以降、ミサイル配備の様相がわかる写真展や安保関連3文書の問題についての講演会などを開催してきました。共同代表の伊盛(いもり)サチコ氏(日本共産党うるま市議)は「うるま市内で、この問題への認識は広がっている実感はある。ただ、写真展を開催できたのは63ある自治会のうち9カ所だけ。まだ厳しい状況ではあるが、他地域にも輪を広げられるよう一歩ずつやっていくしかない」と語ります。

軍拡反対の声 着実に

沖縄全県組織 早期結成へ

 うるま市内では勝連分屯地で進むミサイル配備について、市民の多くがいまだ十分に理解できていないのが現状だといいます。国・自治体からの説明もないまま、水面下で進む軍拡。伊盛氏は「建設が始まったが、市民の目には見えていない。見えないから何をやっているかもわからない」と訴えます。

 厳しい状況に直面する沖縄の現実。その一方、昨年末、那覇市内で新たに個人や団体参加による全県組織の早期結成が提起されました。「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」の山城博治共同代表が呼びかけると、参加者らは「いま立ち上がる時だ」と賛意を示しました。県内各地で、「憲法9条守れ」「戦争反対」の声は一歩ずつ、着実に広がり始めています。

 毎週木曜日、辺野古ゲート前で新基地建設中止を訴えるうるま市民の姿があります。ゲート前では、三線(さんしん)の音に合わせて「黄金(くがね)の花/ネーネーズ」の歌声が響いていました。

 敵基地攻撃能力保有で「抑止」どころか戦争をかえって呼びこみかねない政府の欺瞞(ぎまん)に、沖縄は翻弄(ほんろう)されています。「抑止力」とうたう軍備拡大がいずれ破綻することを民謡の一節にのせて歌います。「黄金の花はいつか散る」―。手拍子をたたく市民たちの手には、平和を求めてたたかい続けてきた日々が刻まれています。