米と財界の「ご用聞き」か
ソフトウェア会社経営者 ビル・トッテンさん
破綻したアメリカ型ルールを押し付ける環太平洋連携協定(TPP)について、政府は「日本にプラスになる」と言っていますが本当でしょうか。
オバマ米大統領は2月に行った経済報告でも、TPPによって貿易障壁を取り除き、アジアの市場を開放することでアメリカの輸出拡大を目指すと明確に述べています。それはアメリカ企業が日本により参入しやすくすることです。アメリカの思惑通りの基準を日本が受け入れれば、農業だけでなく医療市場の開放、そして国民皆保険制度の崩壊へとつながる可能性もあります。
日本の農業が打撃を受ければ、食料自給率も低下します。これ以上、食料を海外に頼ることができるでしょうか。世界の食料事情はひっ迫しています。干ばつなど天候の影響もあり、どの国も自国の食料の確保でせいいっぱいです。日本人を食べさせる余裕はありません。TPPへの参加は日本の農家をアメリカ政府から多額の補助金を受けている大型農業と競争させることです。東日本大震災で東北地方を中心に農家が大きな被害を受けましたが、生き残った農家も打撃をこうむることは目に見えています。
目先の利益だけ
TPPで誰が利益を得るのか。それは一部の多国籍企業や富裕層だけです。1%の利益のために99%が犠牲にされる、といってもいい。アメリカのウォール街では抗議のデモが起きています。
1%の存在である彼らにとって、自分たちの目先の利益しか眼中にありません。それでも、日本の民主党政権はなぜ、TPPに突っ走ろうとしているのか。
その根っこにはアメリカと財界・経団連いいなりの政治があります。自民党も民主党も同じ。政治献金をもらっている大企業に逆らうことはできないからです。日本の大マスコミもTPPの問題点はほとんど報道しません。国民は実態を知らされていません。マスコミにとっては巨大輸出企業の広告の方が大事ですからね。
気前のいい日本
日本の歴代政権はアメリカにモノが言えない。TPPの問題でもアメリカいいなりです。日本はアメリカに対して何か要求したことはありますか。日本の首相はアメリカと財界の「ご用聞き」なのかと言いたい。逆にアメリカ側から見れば日本は何を要求してもすぐに受け入れてくれる国です。これほど取り放題で気前のいい国はほかにないでしょう。
日本の権力者がアメリカにへつらう姿勢を、アメリカの知人は軽蔑の目で見ていました。日本がますますアメリカに付き従う国になっていいのでしょうか。(聞き手 矢守一英/写真 橋爪拓治)
(2011年10月24日)