住民合意の土地計画急げ
東京農工大学教授(地域計画) 千賀裕太郎さん
震災復興をめぐっては、地域復興の基礎となる土地の利用計画づくりが根本になります。今回の大震災では、入り組んだリアス式の土地で大規模な地形の変化も起きています。阪神大震災のときの神戸よりはるかに複雑な、土地交換や区画整理をはじめとした土地利用の基本計画をつくることが課題だと認識すべきです。ところが政府の対応は後手後手で、まったくなっていない。
津波の被災地、特に沿岸部では、地盤が1メートルも沈下して、平常時でも潮に漬かるようになり、地形も相当変わっています。標高や地形の変化がどうなっているかをきちんとつかむことは最も基礎になる問題です。これは、人工衛星・ランドサットを活用してやればかなりスピーディーにできるはずです。また、放射能汚染、塩分や油による汚染の分布をきちんと調べることも重要です。
上から強制ダメ
対応の遅れにしびれを切らし、家を建てはじめている人、修復して住むという人もいます。もちろん地域への愛着から元のところに住みたいという気持ちは当然です。他方、また津波が来るかもしれないし、水はけが悪いことなどから、もう少し高いところに住みたいという要求もあります。しかし、高いところに土地があるとは限らず、ジレンマに陥って困っている人が多い。
この中で、土地利用計画という基礎的問題をあいまいにしたままでは、まともな復興にはなりません。何者かが高台を買い占め地価が上がるという、怪しい動きも出ています。
だからといって、上から「計画」を強制するのはダメで、住民自治を尊重しながら、専門家の提案を入れて十分な議論をし、地域全体が納得する計画を持つ必要があります。そのために、専門家や大学院生などを十分に雇い、計画作りや住民の合意形成をサポートする中間支援組織をたくさんつくる必要があります。市町村の職員は、自らダメージを受けている上に、二重債務の手続きなど膨大な仕事に追われています。
要請に応える若者、人材はあります。私の大学の学生や大学院生の中にも、「地域復興に寄与したい」という強い思いをもつ者がたくさんいます。
自然エネ活用へ
被災地復興のもう一つのポイントは、原発からの撤退の中で、自治体や農村集落が自然エネルギー活用の事業主体となることです。小水力、風力、バイオマスなどでエネルギーを自給し、余ったものは売れるように、買い取り制度も充実することです。社会全体のあり方を見直す、大きなチャンスなのです。
大資本が進出してきて利益を吸い上げてしまうような、構造改革型「復興」にしては元も子もありません。(聞き手・写真 中祖寅一)
( 2011年10月23日)