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【写真】森田俊彦さん

TPPで耕作断念7割に

鹿児島・南大隅町長 森田俊彦さん

 北緯31度線が通る本土最南端の佐多岬を有する私たちの町は、三方を豊漁の海に囲まれ、黄金カンパチ、キビナゴ、黒豚、緑竹など畜産と農漁業、観光の町です。人口9000人で高齢化率は43%、空き家が605戸と16%を占め、高齢化と過疎化が急速にすすむ現実と日々苦闘しています。

 6月議会では、米軍空母艦載機の離着陸訓練施設の馬毛(まげ)島への移設反対を求めた畜産振興会や、はえ縄操業団体の反対陳情を採択し、「意見書」も可決しました。私も議会も断固反対の立場は不動です。

訓練が始まれば

 大隅半島の最南端部から馬毛島までは35キロメートル、天気が良ければ島はすぐそこに見えます。以前は、農耕や漁で2~3泊していたゆかりの島です。周辺はトビウオ、キビナゴなど第一級の漁場ですが、近年は滑走路建設で表土が流出してサンゴ礁が死滅し、漁獲が激減しています。訓練が始まれば周辺は立ち入り禁止区域となるでしょう。

 町の農業総生産額の7割は畜産です。静かな山間部では、車のクラクションの音でさえ鶏はパニックを起こし圧死事故が起きています。離着陸訓練の爆音が畜産・漁業に与える被害ははかり知れません。

 国内外から120チームが参加する「ドラゴンボート・フェスティバル」などでにぎわう観光業や、山紫水明、豊かな自然を求めて移住者が増えはじめている定住促進にも悪影響を与えるでしょう。

 製材業の3代目として私は、27年間従事しました。60年代に木材の輸入完全自由化を政府が受け入れた途端に外材が大量に輸入され、製材業は壊滅的な打撃を受けました。その生き証人です。

 野田内閣が何をやりたくてTPP(環太平洋連携協定)参加なのか、さっぱり理解できません。TPPを受け入れ、米国などの農畜産物が大量に入ってくれば、温暖な気候を生かした実り豊かなまちの農業は、7割が耕作を断念せざるをえません。断固反対です。

住民福祉前進を

 住民のことを考えるとこれ以上の合併はできません。本土最南端の隅っこでも「住民福祉の前進を」を掲げて近隣の4首長が一堂に会し、福祉・医療・介護、観光などで共同のネットワークづくりをすすめています、さらに前進させていきたい。(聞き手・鹿児島県 村山 智)

(2011年10月18日)

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