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阿部長商店・阿部泰浩社長.jpg復興は「人」こそ大切

阿部長商店(本社・宮城県気仙沼市)社長 阿部泰浩さん

 東日本大震災で大きな被害を受けましたが、「人は水産加工業の財産、地域の宝」との思いで従業員800人の雇用を守るため努力してきました。

 津波で9カ所の加工場・冷蔵施設のうち、南三陸町の1工場を除く8カ所が被災し、本社も流されました。

 気仙沼の水産加工工場を今年1月にようやく再開しましたが、基幹工場の再開はまだです。再建のために新たな土地を確保したいのですが、市の産業用地かさ上げ計画が決まらず、なかなか進みません。

 経営するホテルは、昨年5月6日から避難所として被災者を気仙沼で200人、南三陸で600人受け入れました。そして今は通常の営業ができています。

 当初から、1年で復旧しようという目標を持ってきました。しかし、震災直後、なかなか先が見えない時期が2カ月くらいあり、その期間はつらかった。何らかの明かりを見つけようと、懸命に考え続けました。今は考えたことを一つひとつ実行しています。

信頼関係強く

 震災後に従業員との信頼関係がより強くなったことが何よりも良かったと思います。国の雇用調整助成金なども活用して、雇用を守ってきましたが、全員の職場復帰がかなうところまであと一歩です。早く本格再建をして、若い人が生き生きと働けるようにしていきたいですね。

 気仙沼市全体をみると、残念ながら働ける場がまだまだ少ないのが現状です。水産業が立ち直らないと、雇用の受け皿ができない。被害が大きいということもあるけれど、がれき撤去作業が進んでいません。かさ上げをするにしても、早くしてもらいたい。どこに工場をつくっていいのか示してもらったら、すぐにでも動きたいという思いです。

 自分の力ではどうにもならない方がまだまだいます。一方では「1年たったら被災者じゃない」という見方をする人もいますが、現状はまだ大変です。もう少し、弱者に手を差し伸べてほしいと思います。

ぜひ現場見て

 「復興交付金」の規模も小さく、どこまで使えるのかがわからないのが不安なところです。宮城県が申請したうち初回配分されるのは6割未満というのは、どういうことなのか、復興庁のあり方もみえてきません。ぜひ現場にきて実態を見ていただきたい。

 雇用対策について補助金も出ると聞きますが、現場の実情にあった使い勝手のよいものにしてもらいたい。なによりも産業を復旧・再建して雇用の場をつくることに重点を置くべきではないかと思います。やっぱり、われわれにとって大切なのは、「人」ですから。

 私自身も自宅を被災し、社員寮のアパートに妹家族と暮らしています。でも、自宅は後回しでいい。地域の産業復興、従業員のために工場の再建を最優先して、再び活気のある水産業の街をとりもどしたいのです。

 聞き手 浜島のぞみ・森近 茂樹( 2012年3月19日付)


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