町村壊すTPP 首長の思い
「林業再生」台無しに
鳥取・若桜町長 小林昌司さん
鳥取県若桜(わかさ)町は、人口約3900人です。「平成の大合併」の際も合併せず、町民のみなさんと町づくりを続けています。
政府が進めようとしているTPP(環太平洋連携協定)への参加は、断固反対です。私が副会長を務める県町村会は会を挙げて反対を決めました。県内の町村長はみんな反対です。町議会も反対の特別決議をしており、最後まで反対を貫きたいと思います。
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若桜町は、町面積の4分の1を占める国有林をはじめ、豊富な森林資源があります。かつて製材工場が10ほどあり、加工された製材は旧国鉄若桜線(1930年開通、現・若桜鉄道)を通じて出荷され、町民に大きな収入をもたらしました。「盆・正月に杉の木を数本売れば、半年は生活に困らない」と言われておりました。
それが、1970年代の政府による外国産材の輸入自由化で一変しました。林業所得の減少で林業従事者が減り、森林組合も無くなりました。町も過疎化が進みました。
町では、「面積の95%を占める森林の活用こそ町の生きる道だ」と、2010年を「林業再生元年」と位置付け、五つの工場を統合した新しい製材工場の経営改善などに取り組んできました。現在は、県外から購入した材木の加工が中心なので、町内の8000ヘクタールある民有林(人工林)などの森林資源を加工・出荷できるようにするなど、林業所得を増やしていきたい。
木材加工に加え、木質バイオマスへの挑戦を考えています。町では、40年近く前から小水力発電に取り組み、エネルギー自給率はすでに100%を超えていますが、さらなる発展を目指します。
TPPへの参加は、こういう努力を台無しにします。農業、林業で自給率を高めなくてはならない時に、関税をなくし、農産物や林産物の輸入の自由化が進められれば、農業や林業に従事する人がいなくなり、町は寂れてしまいます。
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「町民一人ひとりを大事にする」という思いで中学校卒業までの医療費無料化、学校給食費補助(4月から)など子育て支援にも力を入れています。多くの施設が近代化遺産となっている若桜鉄道の活性化とSL観光列車の運行実現、2018年冬季五輪が開かれる韓国・平昌郡との友好交流の促進などでさらに魅力ある町づくりを進めていきます。
多くの町村長は、党派を超えて「国民の視線にたった政治をしてほしい」と切実に感じています。国政でも国民の立場に立った政治を一日も早く実現してもらいたいと思います。
聞き手・写真 内田達朗( 2012年3月18日付)