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TPPは農と長寿壊す

東京都農業会議会長・元八王子市長 波多野重雄さん

 菅直人前首相が突如、「平成の開国」をするとの名目でTPP(環太平洋連携協定)交渉参加の検討を表明しました。しかし政府が情報を断片的にしか出さず、国民の合意も得ずに一方的に表明するのは、戦時中のような怖さを感じます。

 日本政府は1995年にミニマムアクセス米の輸入を受け入れてしまい、いまは毎年77万㌧を輸入しています。WTO(世界貿易機関)の農業交渉も厳しい折衝になりました。そういう屈辱的な外交を続けてきたのに、TPPに参加したらどうなるか。

 アメリカは、日本がBSE(牛海綿状脳症)対策で行っている牛肉の輸入条件の緩和や食品の安全基準の緩和も要求しています。TPPに参加すれば、日本の農業、とくに輸入と競合する品目は壊滅的な打撃を受け、国民の健康が害され、長寿社会も守れなくなる。

 野田佳彦首相は「協議するだけだ」「守るべきものは守る」と言いましたが、アメリカの要求をそのまま受け入れてしまうのではないか。

推進は経団連

 国内でTPP推進を強く主張しているのは日本経団連です。大企業は関税撤廃で大喜びでしょうが、日本の農業が壊され、農地が保全できなくなる。農地や山林があることで、小川にはホタルが来るなどの自然が保たれるのです。

 私は十数年前からモンゴルの砂漠に植樹し緑化する運動に取り組んでいますが、植えた木が成長して林となり、ウサギやタヌキが来るようになり、畑も広がりました。

 一方、日本では政府が減反政策を続け、農家の労働意欲を失わせました。東京では、都市化を優先して高層ビルの街、「東京砂漠」にしたため、地価の高騰で農地の相続税負担も莫大になり、農家が代を継げずに農地が減少しています。

 経団連はまた、株式会社による農地取得を全面解禁するよう求めていますが、企業に「農業で利潤をあげられなくなったらどうするか」と質問したところ、多くの企業が農地を他の目的に利用すると回答しました。これでは貴重な農地を次代に残せません。

海も荒廃する

 農地や山林の荒廃は土壌の流出で海の荒廃ももたらし、ひいては日本の食料生産全体の破壊につながります。

 都民は都市の農地を残してほしいと願い、体験農園には多くの人が集まります。私たちは都市農業を守るため、相続税負担の軽減も訴えています。

 日本政府の大使命は、東日本大震災からの復興をどうするのかという問題です。TPPを進めている場合ではありません。日本の農業と環境を壊すTPPを、体を張って食い止めたい。

 聞き手・写真 東京都・川井亮(2012年1月26日付)

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