偽りの看板で増税か
日本消費者連盟共同代表 山浦康明さん
私たち日本消費者連盟は、消費者の権利や食の安全、環境を守り、平和な暮らしを築くことを目標に活動している団体です。この立場から、今回の消費税増税に強く反対しています。
政府は消費税増税を打ち出すにあたり、「社会保障と税の一体改革」というキャッチフレーズを掲げています。しかし、私たちは、増税の真の狙いは、税収増を膨大な財政赤字の穴埋めに充てる原資にすることだと訴えています。
自民、公明、民主も含む歴代政府は「成長神話」の下で、大企業の競争力強化と国内での大型公共事業など公共投資に大規模な財政を投入してきました。その結果、国内総生産(GDP)の2倍に迫るほどに財政赤字が膨らみました。
ムダ多々ある
一方、政府は、「小さな政府」をはじめとする「構造改革」政策を進め、社会保障や公的分野に市場原理を持ち込む新自由主義の施策を実施しました。これにより、現在のような社会保障政策の後退と貧困がもたらされました。
これらの路線に対する反省がありません。にもかかわらず、消費税増税をすれば社会保障が向上するという政府の言い分を信用することはできません。「社会保障のため」は、国民だましの看板にすぎません。
歳出のあり方でも、財政赤字削減のために見直すべき項目が多々あります。八ツ場ダムはその典型です。水不足ではないのに、地域一体を全部水に埋めてしまう、住民犠牲の野蛮な事業です。
原子力発電も、建設費だけでなく、〝安全神話〟の流布や立地自治体などに莫大な予算が投入されてきました。日本国憲法に反する米軍への支出や、自衛隊予算も究極のムダです。自衛隊予算は、米国の肩代わり戦略の下で金額が膨らんできました。
ただせ法人税
私たちは「小さな政府」路線に反対します。社会保障についての政府の責任を再確認し、税の所得再分配機能を強化する必要があると思います。大企業に対して甘い現在の法人税のあり方をただし、税の累進性を強化して、持てる人たちからしっかり税金をとる。それを社会保障が必要な人々の施策に充てるべきだと思います。
今、原子力発電所の事故による放射能除染問題や原発の廃止、環境問題や環太平洋連携協定(TPP)への参加の問題などを契機に、若い人たちの社会運動への参加が増えています。国民生活の一つ一つの課題でのこれらの地道な取り組みが横のつながりを持てば、社会を変える大きな運動になると確信しています。
共産党さんは消費税の導入・税率引き上げには一貫して反対してきました。また、「原発ゼロ」を打ち出し、TPPでは反対集会やデモ行進などもされています。市民運動として注目し、共同できるところもあると思います。
聞き手 大小島美和子/写 真 吉武克郎( 2012年1月21日付)