「オール沖縄」新基地阻む
沖縄大学名誉教授(沖縄近現代史) 新崎盛暉さん
辺野古の米軍新基地建設に伴う環境影響評価書を、沖縄防衛局が昨年12月28日未明、県庁への搬入を強行しましたが、政府の卑劣な手法は今に始まったことではありません。
これまで、軍用地契約を拒否する反戦地主や一坪反戦地主に対し防衛施設局(当時)が行った土地の強制使用手続きも同様のものでした。日本政府は常に「形式さえ整えば良い」との〝形式主義〟をとり、誠意を持って対応しようとする姿勢が完全に欠落しています。
推進当事者も
現在の情勢は、1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で米海兵隊普天間基地(宜野湾市)を移設条件付きで基地を存続させようとした当時の状況とは一変しています。条件付き容認派だった仲井真弘多知事も県民世論に押され、「辺野古は事実上、不可能」と、埋め立て拒否の姿勢をとっています。もはや、「オール沖縄」の社会的雰囲気が、新たな基地建設を全く不可能なものにしています。
昨年11月14日に県議会が全会一致で可決した「米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対し、環境影響評価書の提出断念を求める意見書」に対し、私を含む県内19人が賛同アピールを発表しました。そこには稲嶺恵一元県知事など、新基地建設を推進してきた当事者も含まれています。これは、「新基地建設反対」が草の根に広がっている時代状況を如実に反映したものと言えます。
世論の喚起を
米国内でも厳しい財政難のもとで軍事費の削減や、グアム基地整備費用予算を議会が削除するなど、見直しが迫られています。SACO合意の米国側の当事者だったジョセフ・ナイ元国防次官補も在沖縄海兵隊の豪州移転を論じています。日本政府だけが、北朝鮮などの「仮想敵に対応する」などと時代錯誤の姿勢に固執し、問題をこじらせています。解決の道は、新基地建設計画の撤回以外にありません。
19日から始まる県環境影響評価審査会で、評価書の不当性やデタラメが具体的に立証されていくでしょう。しかし日本政府は、どんな批判にさらされても、埋め立て申請に向けた一連の手続きとしかみないでしょう。
いま重要なことは、評価書のずさんさへの批判とともに、あらゆる創意・工夫を凝らし、日本全国で普天間基地の即時閉鎖・撤去、辺野古新基地建設反対の世論を喚起していくことです。
聞き手・写真 沖縄県 星野淳(2012年1月15日付)