「労使対等」全く欠落
橋下徹市長は「大阪市労使関係に関する条例案」を7月市議会に提案し、労働組合と市当局の団体交渉の内容を一方的に制限しようとしています。
地方公務員法は、「勤務条件」は交渉対象(第55条1項)とする一方、「自治体事務の管理運営事項」は対象外(同3項)としています。ただ「管理運営事項」の具体的な規定はありません。
総務省の見解
総務省は「予算、政策等が該当するものと考えているが...個別具体的に判断する」(今年3月21日「地方公務員の新たな労使関係制度の考え方について」)という見解です。
公務員制度審議会の答申は「管理運営事項の処理によって影響を受ける勤務条件は、交渉の対象となる」(1973年9月3日)としています。
にもかかわらず橋下市長は、「勤務条件」と密接に関係する職員の定数と配置、転任や分限処分などを「管理運営事項」に入れたのです。分限処分には民営化など職場廃止による解雇も含まれます。
市長が一方的に「管理運営事項」を具体的に決めて、それに関する交渉を禁止し、違反すれば免職を含む懲戒処分にするなどは、独裁政治そのものです。
12日の市議会本会議―。日本共産党の井上浩議員は「団体交渉のルールを使用者(市長)が一方的に定め、それに反する交渉には一切応じないというのは不当労働行為」「条例案は、労働基本権を全面否定しており違憲だ」と主張しました。
勝手な解釈で
橋下市長は「条文の解釈が間違っている。条文をしっかり読んでもらいたい。地方公務員法第55条3項で、管理運営事項は交渉の対象とすることができない。それをはっきりルール化しただけ」と答弁しました。
総務省の見解も公務員制度審議会の答申も無視し、条文を自分勝手に解釈し、憲法が保障する基本的人権を平気でじゅうりんする。あまりにも異常で独善的なやり方です。
条例案はほかにも、自由な発言の規制につながる報道機関への交渉公開、人事委員会は組合に収支報告書など必要な書類の提出を求めることができる―といった前代未聞の労働組合運営への介入条項まであります。
人事委員会は、法律で設置義務のある行政委員会ですが、組合に対して収支報告書の提出を求める権限を定めた法律はありません。
日本労働弁護団の宮里邦雄会長は6月25日、「橋下市長に、異議あり 6・25集会」で講演し、次のように訴えました。
「橋下氏の頭の中には、労使関係は対等であるという考え方が、全く欠落しています。市長は、大阪市政の責任者で統治権を持っているのと同時に、労働組合との関係では使用者です。労使関係の対等性は労働法の基本的なルールです」
(「赤旗」2012年7月24日付)
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