"厳罰"修正に動くが
「地方公務員法に政治活動への罰則がないのはおかしい。国家公務員法にはある」―。橋下徹市長は5月23日、大阪市職員の政治活動を制限し、違反には刑罰を科す条例の制定をめざすことを明らかにしました。
地方自治法上、条例で科すことができる上限「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」を適用する意向でした。
「法律に違反」
これに「待った」をかけたのは、閣議決定された政府答弁書(6月19日)。地方公務員法(地公法)に罰則がないため、「条例で罰則を設けることは、法律に違反」との見解を示しました。橋下市長の刑罰路線は修正を余儀なくされたのです。
ところが同じ答弁書は、その理由として地公法制定時(1950年)の政府提案理由=「懲戒処分により地方公務員たる地位から排除することをもって足る」を引用しました。
これに飛びついた橋下市長は、「原則懲戒免職、バンバン公務員の地位から排除する」(6月20日)と息巻きました。
しかし、当時の国会審議で政府は、「政治的行為の違反があった場合に、必ずこれを懲戒処分によって解職するというようなことは毛頭規定しておりません」(50年11月29日、衆院地方行政委員会)と答弁していました。
橋下市長は本紙記者がこの事実を指摘(6日)すると、「知らない」「政府に問い合わせていない」と答え、「『地位からの排除』という疑義のある言葉を閣議決定で使った政府の方がミスだ」と居直りました。
日本共産党大阪府委員会の山口勝利委員長は6日、条例案を厳しく批判する談話を発表しました。
「市の職員が勤務時間外に『原発ゼロ』や『消費税反対』を主張したり、こうした集会や演劇などに参加することがすべて監視の対象とされ、当局が『条例違反』とすると、すべて免職される」「こんなことが日本国憲法のもとで到底許されるものではありません」
市議会で追及
12日の市議会本会議でも、日本共産党の井上浩議員が、「閣議決定を論拠にするのであれば、国会答弁の一部ではなく全体を読んで判断すべきだ」と追及しました。共産党の追及は議会内外で徹底していました。
新聞各紙の13日付大阪版は、「政治活動『原則免職』撤回」「一律免職を修正」などと報じました。橋下市長と与党「大阪維新の会」、第2会派の公明党の3者が12日、「原則懲戒免職」を「戒告、減給、停職または免職処分ができる」と修正することで合意したというものです。
ここでも"厳罰化"は後退しましたが、懲戒処分は残っています。憲法で保障された政治的市民的自由を侵害する条例案の本質は変わっておらず、廃案以外にありません。
(「赤旗」2012年7月20日付)
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