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2024年12月24日(火)

主張

子どもの権利30年

人権を監視する独立の機関を

 今年は、日本が子どもの権利条約を批准して30年です。全国各地のさまざまな場面で、権利条約を学び、子どもの権利を守り生かすとりくみがされてきました。しかし、いじめや虐待、貧困など子どもの権利侵害の状態は深刻です。

 1989年に国連で採択された子どもの権利条約の画期的な点は、「子どもは守られるだけでなく、権利の主体である」と明確にしたことです。子どもは生まれながらに、おとなと対等平等にひとりの人間として権利、人権を持つと同時に、成長の過程にあって保護や配慮が必要な、子どもならではの権利があることを宣言しました。

■条約無視の自民党

 ところが、三重県津市議会の「こども計画」を審議する全員協議会(11月)で、ある保守系議員が「子どもに人格ってあるのか」「子どもに権利があったらえらいこと」と発言したように、「権利の主体」としてとらえない、古い“子ども”観が残されています。そこに、日本で子どもの権利保障が大きく遅れる最大の要因があります。

 責任は自民党政治にあります。条約批准に際し外務省が作成した「児童の権利に関する条約の説明書」(1993年)は、権利条約を実施するための「新たな国内立法措置」や「予算措置」は「不要」としていました。

 そのため日本の法律に子どもの権利が明記されたのは、理念法では批准から15年後の「子ども・若者育成支援推進法」(2009年)、個別法はさらに遅く16年の児童福祉法改正においてでした。自民党政治は人権保障に背を向け、子どもの権利条約を事実上、無視して脇に置いてきたのです。

■遅れ打開のために

 昨年4月、こども家庭庁がスタートし、こども基本法が施行されました。しかし、政府から独立した子どもの権利救済機関(子どもコミッショナー)の設置は市民の強い要望がありながら法律に入りませんでした。遅々として進まない日本の子どもの権利保障をすすめるためには、設置を本格的に検討し、実現へ乗り出すことが必要です。

 子どもコミッショナーの役割は、人権擁護の立場で専門集団が子どものSOSを受け止め、政府の子どもの権利条約の履行を監視し促進することにあります。

 国連・子どもの権利委員会は02年に、子どもの権利実現のためには、独立した国内人権機関が必要だとしました。すでに70カ国以上で子ども施策の担当省庁とは別に設置されています。スコットランドの子ども・若者コミッショナーはコロナ対策を政府に意見表明し、韓国も人権擁護委員会が活動しています。

 日本では、条例に基づく子どもの相談・救済機関の設置がすすんでいます。43の自治体に設けられ(子どもの権利条約総合研究所の調査)、SNSのいじめ相談から改善につなげたり、校則への不服申し立てや、子どもの権利の学習や広報など、さまざまな努力が行われています。

 いよいよ問われるのは国の責任です。子どもたちの笑顔のために、あらゆる場での子どもの意見表明を社会の当たり前にし、専門家の配置や予算確保などをすすめていきましょう。


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