2024年12月18日(水)
原発回帰いっそう鮮明
エネ基本計画原案 新規建設も踏み込む
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国の中長期のエネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画」の原案が公表されました。17日に開かれた経済産業省の審議会で示され、意見を踏まえさらに検討するとしました。
原案で原発については、東京電力福島第1原発事故以降、政府自身が掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」の文言を削り、再生可能エネルギーと合わせ「最大限活用」を打ち出しました。事故の教訓を投げ捨て、原発回帰をいっそう鮮明にした形です。
さらに原発の新規建設について踏み込み、岸田文雄政権が2022年12月に決めた「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」で廃炉を決めた敷地内と限定していたのを、電力会社が同じなら敷地外でも可能にし、新規建設をしやすくする方針としました。新規の原発についても「開発・設置に取り組む」としました。
原案は2040年度の電源構成に占める原発の割合を「2割程度」、太陽光など再生可能エネルギーの割合を「4~5割程度」に、LNG(液化天然ガス)や石炭などの火力発電を「3~4割程度」と温存する方針です(図)。
現行の計画は30年度に原発は20~22%、再エネは36~38%、火力を41%(うち石炭を19%)などにするとしており、新しい計画はその先の10年後も大きく変わらない目標となりました。再エネについて現行計画にあった「最優先の原則」で取り組むとの文言がなくなりました。
G7(主要7カ国)で唯一、廃止期限を表明していない石炭火力については、「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」などとし、火力発電を分類した目標を示していません。
エネルギー基本計画原案骨子
17日に経済産業省が審議会に示した第7次エネルギー基本計画の原案の骨子は次の通りです。
- 2040年度の電源構成で原発の比率を「2割程度」とする
- 原発の「可能な限り依存度を低減する」方針を削除
- 原発は再生可能エネルギーとともに「最大限活用する」
- 原発の建て替え方針を緩和
- 新規の原発の「開発・設置に取り組む」と明記
- 再生可能エネルギーの比率を「4~5割程度」にする
- 火力を「3~4割程度」とする
エネルギー基本計画 エネルギー政策基本法に基づいて策定されるもので、電力や電源について国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す計画。少なくとも3年ごとに情勢の変化などを踏まえ改定されます。現行計画は2021年10月に閣議決定。今回が第7次計画で、40年度にめざす電源構成を示し、政府の温室効果ガス削減目標の裏づけとなります。