2024年12月17日(火)
論戦ハイライト
参院予算委 吉良・大門両議員の追及
16日の参院予算委員会で質問に立った日本共産党の吉良よし子議員と大門実紀史議員。吉良氏は、アルバイトに追われる学生をさらに追いつめる大学学費の値上げをストップさせ、政府の責任で無償化に踏み出すよう迫りました。大門氏は、物価高で苦しむ庶民には容赦なく課税しながら、大企業・富裕層を優遇する税制を転換し、所得の再分配で格差を是正する税・財政本来の役割を取り戻すよう追及しました。
学費無償化
軍事費突出 予算を見直せ
吉良議員
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「学生が103万円を超えてアルバイトしなければならないのは学費が高すぎるからだ」―。吉良氏は、学生のアルバイト収入が103万円を超えると保護者の扶養控除がなくなる「103万円の壁」を巡り、学費や生活のためにアルバイトに追われる学生の実態を突きつけました。看護学生の7割が奨学金を利用しているとの実態調査の結果や、「アルバイトのしすぎで単位を落とした」などの学生の声を紹介し、「年収100万円稼ぐには週21時間アルバイトをすることになる。本末転倒だ」と迫りました。
吉良 学生が学費や生活費を稼ぐためにバイトに追われ、学業がおろそかになってもいいのか。
阿部俊子文部科学相 アルバイトに追われることがないように、学生の経済的負担の軽減に努めたい。
吉良 その原因となっている学費そのものを値下げすることが必要だ。
石破茂首相は自民党総裁選で「国立大学・高専の無償化」を公約していました。一方、東京大学が来年度の新入生からの学費値上げを発表し、私立大学も大幅な値上げが進んでいます。吉良氏は、「相次ぐ大学の学費値上げは無償化に逆行している」と追及しました。
吉良 無償化を目指すのであれば、緊急の予算措置で学費の値上げを止めるべきだ。
首相 授業料を上げる大学も、大学独自に減免を講じている。
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吉良氏は、「人ごとのような答弁だ」と批判し、大学の学費値上げの理由には、政府の予算が少ないことがあると指摘。国立大学が法人化された2004年と比べ、運営費交付金が1600億円削減されたとして、「予算を減らし、増やさなかったことが学費値上げの原因だ」とただしました。
吉良氏は、大学の「教育環境の維持」などの負担を学生や保護者に求めるべきではないと主張。日本経済新聞の調査で大学が学費を上げる理由として「国の交付金・助成金などの増加が見込めない」との回答が一定数あると指摘し、「国の予算が増えないと、大学は学費を値上げせざるを得ない」と述べました。
吉良 予算を増やして値上げを止めるべきだ。その責任が国にあるのではないか。
首相 どのように大学のレベルを上げていくかは政府内で検討する。
「予算を増やす」とは言わない首相に対し、吉良氏は、値上げを自由に認め、学生にはバイトで稼げという政治では夢も希望もないとし、「軍事費は補正予算と当初予算を合わせ9兆円規模。教育予算の2倍だ。予算のあり方を抜本的に見直し、学費無償化を目指すべきだ」と訴えました。
税・財政
大企業・富裕層優遇改めよ
大門議員
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課税最低限は生計費非課税の原則に基づいた制度です。所得税の課税最低限である給与収入103万円以下の人は所得税を払わなくてすむ一方、消費税は年間7万~8万円程度の負担となっています。大門実紀史議員は生計費非課税を考えるなら消費税の減税にこそ踏み出すべきだと迫りました。
大門 世界で110カ国が付加価値税(日本の消費税とほぼ同じ制度)の減税に踏み出している。なぜ日本は決断できないのか。
加藤勝信財務相 全世代型社会保障の主要な財源と位置づけているため、消費税率の引き下げは適当ではない。
大門 消費税が導入されたのは社会保障のためではないということは麻生太郎元財務相とも認識が一致している。
大門氏はパネルを示して、消費税が導入された当時、直間比率の見直しがいわれていたことを指摘。“所得税や法人税を減税すれば経済が良くなる。その穴埋めは国民に広く薄く負担してもらう”と議論されていたことを示しました。
実際、消費税導入後、高額所得者の税負担が下がるように所得税の最高税率が引き下げられました。大企業に対しても、法人税率の引き下げのほか、租税特別措置などで減税がすすめられました。一方、消費税率は段階的に引き上げられました。社会保障の財源が口実とされながら、実際には直間比率の見直しだけが進んだのです。
大門氏は消費税が導入されるまで所得税が社会保障財源の中心だったと指摘しました。
大門 社会保障の財源は消費税じゃなきゃいけないのか。累進所得再分配機能のある所得税や法人税でいいではないか。
加藤 消費税にしなければ勤労者などに負担が偏ってしまう。
大門 発想が所得再分配よりも「応益負担」(社会保障給付などを受ける人に負担を課すやり方)に変わってしまったからだ。
大門氏は多くの国民に容赦なく課税する一方、高額所得者には巨額の税金のおまけをしてきたと指摘して、「1億円の壁」を取り上げました。
「1億円の壁」とは、株式譲渡益や配当にかかる所得税・住民税率が20%にとどまる一方、給与所得などにかかる所得税・住民税率は最高55%になるため、株式からの収入が多い高額所得者ほど税負担割合が低くなる現象です。
大門氏はこの問題を07年の第1次安倍晋三内閣の時代から取り上げてきたことを紹介。石破首相も総裁選で見直しが必要だと述べていたことを指摘しました。
大門 総裁選で「1億円の壁」の見直しが必要だといっておきながら、首相になると先送りするのでは岸田文雄前首相と同じではないか。
石破 税負担の公平性が大事だという考えは変わっていないが、「貯蓄から投資へ」という流れにさおさすようなことはしたくない。
大門氏は石破首相の言っていることはアメリカでの上場株式譲渡益への課税方式で解決できるとして、パネルを提示しました。
アメリカでは株式の保有期間によってかかる税率が異なります。1年以下の保有は、短期的利益を求めるものとして51・8%がかかる一方、1年超は34・8%にとどめます。
税制の簡素や公平が大事だとして、導入する考えはないという石破首相に対し、大門氏は世界で最も株取引の盛んなアメリカでやっている制度だから、そんな心配はいらないと諭しました。
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