しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年12月17日(火)

主張

闇バイトの暗ヤミ

犯罪の土壌に目向け根を絶て

 闇バイトを使った犯罪があとを断たず、深刻な問題になっています。この犯罪から社会と国民生活を守ることは切実な課題です。

 闇バイトによる犯罪は、SNSを悪用した新しい犯罪です。警察は、「匿名・流動型犯罪グループ(とくりゅう)」と位置付けています。匿名性の高い通信手段を使用し、事件ごとに実行役のメンバーを入れ替え、中核部分をわからなくするなどの特性があります。

 若者を「高額バイト」「ホワイト案件」などとSNSで集めて引きずり込み、脅迫して利用し使い捨てるケースも目立ちます。「バイト」という言い方で、犯罪への敷居を低くしていることも特徴です。

■必要な対策と予防

 被害者の多くは高齢者です。犯罪種別は、詐欺、窃盗、強盗をはじめ多岐にわたります。最近、一人でいるときに押し入り、危害を加え、殺害まで行うなど凶暴性も目立ち、社会に不安が広がっています。

 こうした犯罪は許されず、その解決は一刻も猶予がありません。

 警察庁も対策をすすめ、「犯人は必ず逮捕する」と宣言しています。専従態勢をつくり、首謀者の摘発と全容解明を急ぎ、若者に闇バイトに手を出さないように呼びかけ、また地域での「防犯対策」も強めています。

 事態の深刻さを考えれば、捜査当局をはじめ行政各部門が連携し、闇バイトを使った犯罪を根絶するために有効な対策に力を尽くさなければなりません。

 同時に、この犯罪に立ち向かうためには、その根を断つことに目を向ける必要があります。社会の病巣を土壌にして生まれているからです。

■際立つ貧困と孤立

 実際、札幌の事件で逮捕された20代の男は動機について「借金があり、生活に困っていた」と供述しています。相談する相手がなく、行政に頼るすべも知らない若者が目立ちます。

 昨年、闇バイトをした少年を26の少年院で調査した浜井浩一龍谷大学教授は、事件の背後に、深刻化する貧困、孤立があると指摘し、「少年たちは、日本社会がもっとまともで将来明るい未来が展望できる、希望が持てる社会であれば、こんな闇バイトに手を出すことはなかった、と言う」とのべています。(「報道1930」11月20日放送)

 日本の若者がおかれている劣悪な状況は国際比較でも浮き彫りになっています。世界6カ国を対象にした調査では、「自国の将来が良くなる」と回答した割合は、中国85%、インド78%、韓国41%、アメリカ25%、イギリス25%に比べ、日本は15%と最低です(日本財団18歳意識調査、2024年)。経済協力開発機構(OECD)38カ国を対象にしたユニセフの子どもの幸福度についての調査(20年)でも、精神的幸福度は38カ国中37位です。

 これらは、多くの原因が複合した結果ですが、「失われた30年」のもと、貧困と格差、非正規労働の広がり、子どもの権利を無視した教育などが若者を直撃したことは、多く指摘されています。

 闇バイトを使った犯罪をめぐる問題では、若者に希望ある未来を示す政治の責任も問われています。


pageup