2024年11月15日(金)
きょうの潮流
江戸五街道の一つ、中山道には69の宿場がありました。日本橋から数えて47次の大湫(おおくて)宿は、美濃高原のくぼ地に立地する山間の桃源郷のようだと評されました▼湫とは湿地を意味し、昔からここは池の中から浮かんだ土地といわれてきました。こんこんと湧き出る井戸水は旅人の飲み水となり、農業をはじめ住民の生活を支えてきました。今の岐阜県瑞浪(みずなみ)市大湫町につながります▼ところがその水源に異変が起きています。井戸やため池の水位が低下し水枯れに。地盤の沈下で田んぼや宅地にも被害が出ています。3代続いて住んできたという男性(79)は「こんなことはかつてなかった」と▼町の存亡にもかかわる異変はリニア新幹線の工事とともに。地下ではそのためのトンネルが掘られていました。JR東海も工事が原因の可能性があるとして調査を開始。掘削は中断していますが、地元の不安をよそに工事優先の姿勢を崩していません▼同じような変事は相次いで。先日も東京・町田市の民家の庭から水と気泡が噴出したため工事は中断。水枯れ、異常な出水、膨大な残土―。地下深く掘り進むリニアは水脈を切断し、自然環境を壊し、地上のくらしにも深刻な影響を及ぼしています▼相模原市で進められている「神奈川県駅(仮称)」の建設。工事現場の壁には「リニアのある明るい未来」をテーマにした作品が展示されていました。しかし、すでに問題山積の巨大計画が未来を開けるのか。沿線からの悲鳴が、その無謀さを表しています。