2024年3月1日(金)
主張
能登半島地震2カ月
地域で住み続けられる支援を
能登半島地震の発生から2カ月になりました。石川県では今も1万1000人以上が避難所で生活しています。ほかに行政がつかんでいない避難者は2月半ば時点で約1万人と推定されます。住宅被害は7万4000戸以上に上ります。被災者が望んでいるのは、地元で暮らし続けることです。そのためには住まいと生業(なりわい)の再建が死活的に重要です。政府が責任を持ち、従来の枠組みにとらわれずに支援を拡充する必要があります。
住宅再建補助引き上げよ
仮設住宅は、7000戸以上の入居希望に対し、3月末までの完成は千数百戸とみられ、遅れが深刻です。避難生活を長引かせ、他市町、他県への流出が増え、地域が丸ごと衰退しかねないと懸念されています。迅速な供給に全力をあげることが求められます。
住宅の再建支援に抜本的な拡充が必要です。被災者生活再建支援法の支援金は最大でも全壊の場合の300万円です。中規模半壊では100万円で、損壊の割合がそれより低い被害は対象外です。再建にはまったく足りません。
資材価格が高騰し、住宅価格が上がっています。実際に住宅を建てられるよう、支援金の額を600万円以上に引き上げることが急務です。中規模半壊に至らない住宅にも支援を広げるべきです。
政府は、最大300万円の上乗せ支援を発表しました。被災者生活再建支援法の既存の給付と合わせて最大600万円の支援を受けることができます。しかし、対象は輪島市、珠洲(すず)市など6市町に限られ、500戸を超える全半壊が報告されている、羽咋(はくい)市、中能登町などは除かれています。住民税非課税世帯、高齢者世帯といった条件も付いています。
上乗せを打ち出すのは、現行制度が不十分だからです。一時的な追加支援にとどめたり、年齢や所得の条件をつけたりする理由はありません。6市町以外や石川県以外でも住宅被害は起きており、自治体で線引きすることは不適切です。あれこれ制限をつけずに被害全体を対象とすべきです。
被災者生活再建支援法は、阪神・淡路大震災後、公的補償を求める被災者の運動を受けて1998年に制定されました。被災の実情に応じて改正するのは当然です。
中小企業・小規模事業者の施設・設備の復旧を支援する生業再建支援補助金は、補助率が必要資金の4分の3です。残る4分の1は自己負担または借り入れで調達するしかなく、「無理」という声が上がっています。上限5億円の定額補助もありますが、過去、災害に遭った「多重被災事業者」に限られています。
事業を再開できる制度に
過去の地震被害に加え、コロナ、物価高で多くの事業者が疲弊し、新たな融資を受けることは困難です。業者が求めているのは、実際に事業を再開できる支援です。
申請手続きの煩雑さも指摘されています。津波や火事で事業所ごと失った業者に実績の完全な証拠を求めるのは、申請を拒むに等しいことです。実情を考えた手続きにすべきです。
農漁業では、農地や漁港が大きな打撃を受けました。復旧を急ぐとともに、営農、出漁できない農漁民に本格的な支援が不可欠です。
人が戻ってこその復興です。政治の役割が問われています。