2022年9月1日(木)
主張
岸田首相の会見
国民の不信と疑念は消えない
コロナ感染の療養から公務復帰した岸田文雄首相が記者会見を行いました。9月27日に予定される安倍晋三元首相の国葬に国民の批判が広がっていることについて「真摯(しんし)に受け止める」などと述べましたが、国葬はあくまで実施する考えを強調しました。「丁寧な説明に全力を尽くす」として国会の閉会中審査に出席すると表明しました。しかし、野党が憲法の規定に基づき要求している臨時国会の早期召集には触れませんでした。このような姿勢では、国民の信頼を取り戻すことはできません。世論の支持が得られず、法的根拠もない国葬は中止しかありません。
国葬の全体費用は語らず
岸田首相は、安倍氏の国葬を行う理由について、首相在任期間が最長だったことや日米関係を基軸にした外交、経済政策などの「業績」を挙げました。これまで繰り返してきた説明と同じです。ここに示した理由こそが、評価が大きく分かれる安倍政治を、国葬を通じて美化・礼賛するものだと厳しく批判されている点です。いくら丁寧に説明すると言っても、安倍氏の国葬に固執する姿勢をとり続けている限り、国民の不信と疑念は払しょくされません。
国葬を行う基準がないことを問われた首相は「その時の政府が総合的に判断し、決定するのがあるべき姿だ」と主張しました。閣議決定をすれば、法的根拠がなくても内閣の一存で国葬ができるという開き直りに他なりません。
首相は国葬当日に、各府省で弔旗の掲揚や、葬儀中の一定時刻に黙とうによる弔意表明を行うことを明らかにしました。これは事実上、国民への弔意の強制につながる危険が強いものです。
国葬費用の全体像についても「できるだけ早く示すよう努力する」とごまかしました。政府は26日に国葬費用に約2・5億円を予備費から支出することを決定しましたが、それ以外にかかる警備費や外国要人の接遇費用を含めれば総費用は桁違いに膨らむという指摘が相次いでいます。政府は、参列者を6000人規模と想定しており、大まかな数字は算出できるはずです。「具体的な数字については、外国要人の数など具体的なものが確定してから」と言い逃れるのはあまりに無責任です。
7月10日開票の参院選直後に国葬を行うと明言し、同22日に実施を正式に閣議決定した「国葬ありき」のやり方こそ大問題です。国民から沸き上がる異論に耳を貸さず、国葬に向けての準備を着々と進めてきたことを根本から反省すべきです。首相にいま求められているのは国葬中止の決断です。
統一協会との癒着究明を
自民党との根深い癒着が浮き彫りになっている統一協会の問題について、首相は「党総裁として率直におわび申し上げる」と述べ、関係を断つことを党の基本方針にすると言いました。一方、安倍元首相と統一協会との関係についての調査には「本人が亡くなった今、十分に把握するには限界があるのでは」と及び腰です。統一協会関連団体からは「反共意識の高い政治指導者」として安倍氏らを応援したとの証言が出ており、曖昧にすることは許されません。
統一協会と長年にわたる関係をどう築いたのか。洗いざらい明らかにすることなしに、関係を完全に断ち切ることは不可能です。