2022年7月29日(金)
主張
統一協会と自民党
闇の解明からの逃げ許されぬ
安倍晋三元首相銃撃事件を機に、自民党と旧統一協会(世界平和統一家庭連合)の癒着の解明が焦点に浮上しています。岸田文雄政権の複数の閣僚は、選挙支援を受けたことや、関連団体のイベントであいさつしたことを認めました。多くの自民党議員が同団体関係メディアで紹介されていることも明らかになっています。旧統一協会は、霊感商法などで消費者被害を拡大している反社会的カルト集団です。政権党との闇の関係を徹底究明することは、政治の責任です。「党としては一切関係ない」(茂木敏充自民党幹事長)と、調査をしないことは許されません。
関係認めても反省示さず
旧統一協会との関係を認めた閣僚は3人です。末松信介文部科学相は、関連団体にパーティー券を購入してもらったと22日明らかにしました。二之湯智国家公安委員長は26日、2018年に京都府内で行われた同団体関係のイベントで実行委員長を務め、あいさつしたと語りました。安倍元首相の実弟・岸信夫防衛相も同日、旧統一協会メンバーと付き合いがあり、選挙を手伝ってもらったと述べました。しかし「常識的な範囲内」(末松氏)「政治家にはいろんな方と付き合いがある」(二之湯氏)と無反省です。岸氏は「選挙ですから、支援者を多く集めるということは必要」と開き直りました。
先の参院選比例代表で同党内13位で当選した井上義行議員(第1次安倍政権での首相政務秘書官)は旧統一協会の「賛同会員」であり、支援を受けていました。
現衆院議長の細田博之議員も19年に旧統一協会系行事に招かれ、スピーチしていました。同団体と一体の右翼団体・国際勝共連合系のメディアを見ると14年以降だけで自民党の国会議員・地方議員80人超が関連団体での講演やインタビューなどで掲載されています(本紙27日付)。自民党と旧統一協会が深く広く結びつき、持ちつ持たれつの関係を築いてきたことに疑問の余地はありません。
いま解明が急がれるのは、旧統一協会が「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」に名称変更することを文化庁が認めた経過です。文化庁は宗教法人制度の運用を担当しています。
旧統一協会は1997年ごろから名称変更を求めていましたが、団体の実体は変わっていないと拒否されてきました。ところが安倍政権下の2015年に方針転換され、変更が認められました。文化庁を所管するのは文科省で、安倍元首相側近の下村博文氏が文科相でした。同氏は旧統一協会系の団体から献金を受けたり、機関紙に登場したりしています。政治的圧力の疑いが濃厚です。下村氏は関与を否定していますが、文化庁は経過を隠しており、疑惑は深まります。名称変更が消費者被害を深刻化させる転機になった可能性があるだけに、曖昧にできません。
臨時国会で徹底質疑を
旧統一協会が日本で活動を本格化させたのは1967年です。岸信介元首相らが反共思想で結びついて支援し、選挙などで利用しました。旧統一協会側は議員秘書の派遣もしました。いま両者は改憲推進などで軌を一にしています。旧統一協会との決別は日本の民主主義にとっても焦眉の課題です。8月3日召集の臨時国会で究明が必要な重要テーマの一つです。