2022年5月19日(木)
沖縄本土復帰50年
基地問題は変わっていない
7日間のハンスト 元山仁士郎さんの思い
沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設断念などを求めて、「辺野古」県民投票の会元代表で大学院生の元山仁士郎さん(30)が、9日から実施したハンガーストライキ。15日午後5時、ドクターストップにより終了しました。沖縄の本土復帰50年の今年、元山さんをはじめ沖縄の人たちはどんな思いで迎えたのか。ハンストの現場を追いかけました。(前田智也)
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ハンストは、実施する数日前に一人で決断。きっかけになったのは、復帰50年を迎えるにあたってオンラインで開かれた「県民大会」(4月30日)です。元山さんも弁士として参加。「50年前も今も、基地問題は変わっていないと感じました。このタイミングで、何かしないといけないと思いました」
多くの激励が
元山さんは2019年2月にも、辺野古新基地建設の埋め立ての賛否を問う県民投票にかかわって5日間、ハンストに取り組みました。県民投票は投票した72%が「反対」に投じる圧倒的な結果が示されました。
あれから3年。辺野古では基地建設が強行され、岸田文雄首相は「辺野古が唯一の解決策」という立場を崩しません。「日本政府が沖縄県民の民意を尊重しているとは思えません。とても復帰50年を祝えるような状況ではない」と訴えます。
連日、70人前後が激励に。その一人、「オール沖縄会議」共同代表を務める高里鈴代さんは、「本土に復帰して50年、基地をめぐる状況は何ひとつよくなっていない。若い人にこうした行動をさせるのは心苦しい。問われているのは日本政府であり本土の人です」。
若い世代も訪れました。SNSでハンストのことを知った都内の大学2学生(20)は、「デモなど、社会運動に参加したことはほとんどありませんが、いても立ってもいられず来ました。日本にこれだけ多くの米軍基地があること、そして沖縄に負担が集中していることはおかしい。自分も行動する側になりたい」と話しました。
デニー知事も
自民党本部前でハンストを実施していた11日には、建議書を岸田首相らに渡すために都内に来ていた玉城デニー沖縄知事がサプライズで訪れました。
デニー知事は、復帰50年の節目だからこそ、「この次の50年を若い世代が考え、議論できるようにしたい。ハンストの意義も、みんなで考えてほしい」と話しました。
元山さんは、オンライン署名も呼びかけました。要求はハンストと同じで、(1)辺野古新基地建設の即時断念(2)普天間飛行場の数年以内の運用停止(3)日米地位協定の見直しの3点。賛同は2万8000人を超えています。
「短期間に、これだけ多くの人から賛同が寄せられて勇気づけられました。近日中に、岸田首相らへ渡しに行きます」
沖縄県が、復帰50年にあたって式典を開いた15日、元山さんは沖縄へ向かい、式典会場近くでハンストをしました。約150時間にわたったハンストはこの日、ドクターストップにより終了。元山さんは語ります。
「岸田首相は、式典あいさつでも『辺野古』には触れませんでした。ハンストをきっかけに私より若い人たちが基地について関心を持ってくれたことはうれしい。復帰50年を迎えても、沖縄の基地問題は変わっていません。またできることを考え、行動していきます」