2022年5月18日(水)
こども関連法案
塩川議員の反対討論(要旨)
日本共産党の塩川鉄也議員が17日の衆院本会議で行った、こども家庭庁設置法案、こども基本法案に対する反対討論の要旨は次の通りです。
貧困、虐待、いじめ、不登校、自殺など、子どもの権利侵害は極めて深刻で、この事態を放置してきた政府の責任は重大です。子どもの権利条約批准から約30年、自民党政権は、条約が掲げた「子どもの最善の利益」「生命、生存及び発達に対する権利」「意見表明権」「差別の禁止」の4原則を軽視し、現行法体制を変える必要はないとの立場を一貫して取り続け、国連子どもの権利委員会は度重なる勧告を行っています。今、必要なのは、子どもを権利の主体として明確に位置付け、憲法の基本的人権と権利条約の4原則を保障する政治への転換です。そのために、子どもが自由に意見を表明し反映される権利を保証する仕組みが必要不可欠で、独立した立場で政府を監視・評価するとともに、子どもの意見表明を代弁し、個別事案の相談・救済に対応する子どもコミッショナーは欠かせません。しかし設置法案には、「子どもの権利条約」の文言すらなく、子どもコミッショナーの設置もありません。これでどうして深刻な子どもの権利侵害を克服できるのですか。
同時にあまりに少なすぎる子ども予算を抜本的に増額し、子どもに関わりケアをする専門職員を大幅に増やすことが必要ですが、法案には予算と人を増やす担保がありません。
次に、設置法案と一体で提出された自公のこども基本法案は、「閣法と相まって子どもに関する取り組みの共通基盤」だとする基本理念に、子どもの「養育は家庭が基本」と明記したことは重大です。「養育は家庭が基本」は、歴代自民党政権が児童扶養手当や生活保護の改悪など子育て支援の後退を合理化する理由として強調してきたものです。虐待や貧困、ヤングケアラーなど、家庭の中で苦しむ子どもたちや保護者をさらに追い詰め、一層孤立させるもので到底看過できません。
もう一つは、教育の問題です。国連からも繰り返し勧告されている過度な競争・管理教育、いじめ、不登校、理不尽な校則など、学校教育における権利侵害は重大です。意見表明権をはじめ、権利条約の4原則の実現が急務にもかかわらず、過度な競争・管理教育、教育への国家介入、愛国心などを押し付ける改悪教育基本法への反省もなく、学校教育における深刻な子どもの権利侵害を放置することは容認できません。
さらに、子どものデータ連携を推進する規定は、生まれた時から子どもの個人情報が集積され、本人の不利益な情報がデジタルタトゥー(ネット上に消せずに残る負の情報)として将来にわたり影響を及ぼしかねないものです。
政府は個人情報を民間企業のもうけの種として利活用する政策を推進している下、プライバシー権の侵害やプロファイリング(人物像の推定)、スコアリング(点数化)などによる権利侵害が生じる恐れを高めるものです。