2022年5月18日(水)
主張
公立病院の新指針
破綻した病床削減計画 撤回を
コロナ危機のもとでも病床削減や病院統廃合を進める自民・公明政権に国民の批判が上がっています。その中で、総務省が3月末に決めた「公立病院経営強化ガイドライン(指針)」について、メディアが「方針転換」「統廃合撤回」(4月18日「産経」)と報じ、注目されました。従来のガイドラインで病院統廃合を意味してきた「再編・ネットワーク化」との言葉をやめ、別の表現に変えたことを受けたものです。ここには強引な病床削減の行き詰まりが示されています。
コロナで重要な役割認識
今度のガイドライン(3月29日公表)は「再編・ネットワーク化」という文言を「(公立病院の)機能分化・連携強化」にかえました。総務省は説明資料で「病院や経営主体の統合よりも、病院間の役割分担と連携強化に主眼」を置いたとしています。
国の財政支援の仕組みも改定しました。これまでは「複数病院の統合」を前提に施設整備費などを補助するやり方でした。今度は、「不採算地区病院」を維持しつつ、医師派遣や救急で他の病院と連携するやり方でも支援します。
今月16日の参院決算委員会で日本共産党の小池晃書記局長は、従来のガイドラインからの変更の理由を政府に質問しました。金子恭之総務相は、新型コロナ対応で公立病院の重要性が改めて認識されたと述べ、「各自治体において地域に必要な病院を存続させることができるよう支援する」と表明しました。“統廃合ありき”から軸足を移したことは明らかです。
ガイドライン策定前に開かれた「国と地方の協議の場」(2021年12月10日)では、全国市長会や全国知事会から「コロナ感染症の対応について、公立病院は強力だった」「公的病院がなくなってしまうと大変な地域の問題になる」「急性期の病床を削減するということでなく、感染拡大の時は感染症病棟へ転用できるよう、一定程度の余力を持つ考え方も必要だ」などの意見が出されました。同協議には、小池氏が国会で岸田文雄首相に病床削減撤回を迫った質問の議事録(21年10月13日)も参考資料として添付されました。地方の声と運動、国会論戦が政府の乱暴な病床削減方針を変更させる力だったことを示しています。
しかし、政府は20万病床の削減計画そのものは変えません。計画推進のために19年に発表した「400超の公立・公的病院を統廃合の対象として名指ししたリスト」の撤回にも応じません。
16日の小池氏の追及に、後藤茂之厚生労働相は「各地域のそれぞれの実情を踏まえて十分な議論を」と言いつつ、撤回は拒みました。破綻が明白な病床削減計画の断念を決断すべきです。
社会保障の拡充の道を
政府が病床削減計画にしがみつく中、総務省の新しいガイドラインも、公立病院の民営化などの「経営形態の見直し」や、医療機能の「集約化」は引き続き進める立場を明記しています。限られた医師・看護師の「最大限効率的」活用なども掲げており、現場からは、医療従事者の疲弊に拍車がかかることへの懸念も出されています。
コロナ危機の痛苦の教訓を踏まえ、住民の命と健康を守る医療体制を構築・再生するには、病床削減計画をきっぱりと中止し、拡充へと切り替えることが必要です。