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2022年5月14日(土)

主張

安倍氏の日銀発言

アベノミクス破綻に反省なし

 安倍晋三元首相が「日本銀行は政府の子会社」と述べて国債を大量に買わせてもいいと発言したことが批判を浴びています。アベノミクス(安倍政権の経済政策)の破綻に開き直り、財政と金融のルールを踏みにじった暴論です。

本音あらわれた「子会社」

 言うまでもなく日銀は紙幣を発行する中央銀行です。通貨の発行や金融の調整にあたって「物価の安定」を図ることが日銀法で定められています。政策を誤ってインフレなどを招けば、被害を受けるのは国民です。政権の思惑に金融政策が左右されることのないよう、日銀の「自主性」の尊重が同法に明記されています。

 それを踏みにじり、日銀を自分の意のままに動かせる機関と扱ってきたのが安倍氏です。「子会社」は本音のあらわれです。安倍氏が導入した政策は岸田文雄政権も継承しており、元首相の発言と見過ごすわけにはいきません。

 安倍氏は第2次政権発足前、「輪転機をグルグル回して無制限にお札を刷る」「建設国債を日銀に全部買ってもらう」と公言しました。

 首相就任後は「大胆な金融政策」をアベノミクスの「第1の柱」に位置づけました。異常な金融緩和の導入に抵抗を示していた白川方明(まさあき)日銀総裁を任期満了前の退任に追い込み、黒田東彦(はるひこ)氏を総裁につけて「異次元の金融緩和」を実行させました。

 日銀が「2%の物価上昇」を目標に、国債を大規模に買い入れてお金の供給を増やせば、物価が上がり、それに伴って賃金も上がり、「経済の好循環」が生まれるということでした。

 実際に起きたのは「好循環」ではなく格差の拡大でした。日銀が供給した大量のお金は株式市場に流れ込み、株価は2倍に上がりました。恩恵を受けたのは大企業と富裕層です。その一方、実質賃金は低下しました。

 日銀を株価つり上げの道具に使ったことは国民に多大な被害をもたらしています。大規模な金融緩和は円安を加速し、物価を押し上げて国民を苦しめています。いま総合指数では1・2%(3月)の上昇ですが、生鮮食品やエネルギーは2桁の高騰です。

 そもそも日銀に国の借金である国債を引き受けさせることは財政法第5条で禁じられています。日銀は、直接の国債引き受けではなく、金融政策の手段として市場から国債を買い入れているとして正当化しています。しかしこれほど大規模な国債購入は事実上、財政赤字の穴埋めです。

 日銀が保有する国債は500兆円を超え、国の借金のほぼ半分です。日銀が大量の国債を抱えることについては、資産価格が下落した場合に財政、金融の信認が損なわれる危険性などが経済、金融専門家から警告されています。

異次元緩和を転換せよ

 黒田総裁は異次元緩和を見直すどころか緩和の「出口」を議論することすら拒んでいます。異次元緩和は安倍氏が日銀を「子会社」扱いして始めた政策です。政府が転換に責任を持ち、実体経済の回復に力を尽くすべきです。

 日本共産党は当初から異次元緩和の危険性を指摘し、無謀な政策に反対してきました。間違った金融政策をただす上でも7月の参議院選挙での審判が重要です。


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