2022年5月8日(日)
主張
ヤングケアラー
孤立させない支援を強めよう
おとなに代わり家族の世話や介護などを担う「ヤングケアラー」について厚生労働省が4月、小学校6年生を対象にした初の調査結果を公表しました。回答した9759人のうち6・5%が「家族の世話をしている」と答えました。約15人に1人です。ケアを始めた年齢は10~12歳が40・4%、7~9歳が30・9%で6歳以前からは17・3%いました。早くから家族のケアに携わるケースが少なくない実態が浮き彫りになりました。
つらさ自覚できぬ可能性
ヤングケアラーは「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」(日本ケアラー連盟)とされます。年齢や成長の度合い以上に重い責任を負わされ、生活や学業に困難をきたす子どもへの支援は重要な課題です。
調査によれば、ケアを必要とする家族は「きょうだい」が71・0%と最も多く、次いで「母親」の19・8%でした。内容は、「見守り」40・4%、「食事の準備や掃除、洗濯」35・2%、「きょうだいのお世話や送り迎え」28・5%などです。
頻度は「ほぼ毎日」が52・9%でした。平日1日にケアに費やす時間は、1~2時間が27・4%と最多ですが、7時間以上も7・1%いました。ケアにあてる時間が長くなる子どもほど遅刻や早退が増えています。「授業中に寝てしまう」「宿題ができていない」「提出物を出すのが遅れる」という子は、ケアする人がいない子の約2倍でした。学校生活に支障が出ていることが改めて確認されました。
しかし、「特にきつさを感じていない」との答えは半数にのぼりました。7時間以上ケアをしている子どもでも、3割超が「とくに大変さを感じていない」と回答しました。家族へのケアが常態化し、大変さを十分に自覚できていない可能性を示唆しています。
ケア時間が長い子ほど「家族のことを話したくない」「相談しても何も変わらない」という割合が高くなりました。困難を抱え込み、孤立を深める姿が浮かびます。学校やおとなへの要望では「特にない」が50・9%の一方で、「自由に使える時間がほしい」15・2%、「勉強を教えてほしい」13・3%、「自分のことの話を聞いてほしい」11・9%との声も寄せられています。「頑張りをほめてほしい」という切実な訴えもあります。
子どもの状況を的確につかみ、耳を傾け、心を通わせるきめ細かな対応が重要です。相談・支援を開始した自治体もあります。子どもが希望を持てる支えをつくるために国は責任を果たすべきです。
苦しめる「家庭」の強調
家族のケアに時間を割く子どもは多くの場合、親が病気などの困難を抱えています。一人親世帯などでは経済的な苦しさも重なります。コロナ禍で生活が一層悪化した恐れもあり、政府の生活困窮者支援の強化は欠かせません。
家族のケアで困難にある子どもが見えにくいとされる大きな要因は「家庭内の問題」とみなされる風潮です。医療・介護・福祉行政の大幅後退が、家庭に責任を負わせる流れに拍車をかけています。岸田文雄政権・与党には「家庭」を過度に強調する傾向が顕著です。「自己責任」論で子どもを追い詰めることは許されません。