2022年4月27日(水)
主張
戦争等の避難者
正面から難民と認めるべきだ
ウクライナの国外避難者が500万人を超えました。日本への避難者は700人以上となり、さらに増える可能性があります。政府は緊急措置として避難者への支援を打ち出しました。ニーズに見合った迅速な支援が不可欠です。
一方、昨年クーデターが発生したミャンマーの避難者(今年3月末で4600人)には、条件付きで就労できる「特定活動」の在留資格を認めたものの、生活支援策はありません。事情によって人道支援の対応が異なることはおかしいことです。暴力や迫害から逃れようと日本に来る人にとって支援の必要性に違いはありません。
難民条約の精神重んじよ
難民条約(難民の地位に関する条約=1951年採択)の精神は、「迫害のおそれ」があり、「国家による保護を受けられず、保護の必要がある」人を国際社会として保護することです。ウクライナからの避難者も、難民条約上の「難民」として保護されるべきです。
ところが日本政府は、「戦争や紛争から逃れてきた者はいわゆる条約難民にはあたらない」と繰り返し、「ウクライナ避難民」と表現しています。用意した支援も「身寄りのないウクライナ人へのもの。まずは親族や知人に面倒を見てもらって」として限定的に運用しています。これでは難民条約を締結した国として、その責任を果たしているとは言い難い姿勢です。
もともと日本は、難民認定が特に厳しい国です。民主化運動のリーダー格でないと難民と認めていません。▽迫害の主体が組織的で、当事国政府から保護を受けられない環境でなければ難民とは認めない▽戦争や紛争から逃れてきた人は難民ではない▽着の身着のまま逃れてきた者に証拠となる書類の提出を求める―など難民条約上の「難民」の認定をことさら厳格にしてきました。
それは難民条約採択直後の発想です。同条約の問題の一つは、戦争や紛争から逃れる人を保護対象としないことでした。この傾向はとりわけ主要国に根強く、アフリカ地域では当然に難民と認められながら、欧州諸国では認定されないことなどが国際的な課題でした。その中で難民の概念は徐々に拡張されてきました。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2016年発表のガイドラインで難民認定方針を示し「国家間における暴力、戦争、武力紛争であっても条約上の難民には該当し得る」としました。
日本も、戦争や紛争からの避難者を、正面から難民と認める姿勢に転換する必要があります。
岸田文雄政権は、紛争地から逃れた人について、昨年廃案となった出入国管理法改定案の「補完的保護対象者」として認定できる制度をつくることに言及しました。しかし、現行法でも避難者を受け入れ、支援することができます。
入管法改定持ち出す欺瞞
廃案となった入管法改定案は、深刻な人権侵害が後を絶たない入管行政を改めず、送還忌避への刑事罰の新設や、難民申請者を強制送還する仕組みの創設で早期帰国を迫る重大な中身です。
人権侵害を拡大する入管法改定案を、「補完的保護」を口実に提出することは欺瞞(ぎまん)です。難民条約の定義と、国際社会の議論に真剣に向き合い、難民認定を抜本的に改めるべきです。