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2022年4月26日(火)

主張

「反撃能力」提言

危機に乗じた憲法破壊許すな

 自民党の安全保障調査会が、岸田文雄政権が作業を進めている新たな「国家安全保障戦略」などの策定に向けた提言をまとめました。岸田首相が検討を繰り返し表明している「敵基地攻撃能力」について、名称を「反撃能力」に変更し、攻撃対象をミサイル基地だけでなく、「指揮統制機能」などにも拡大した上で、保有を求めています。メディアからも「『専守防衛』という日本の防衛政策の大転換につながる」「軍拡競争を一層加速させる」と批判が上がっています。ウクライナ危機に乗じた憲法破壊のたくらみは許されません。

ミサイルの撃ち合い想定

 提言は、岸田政権が年末に予定している「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の3文書の改定に反映させるのが狙いです。

 「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有」し、「対象範囲は、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、指揮統制機能等も含む」と主張しています。保有の理由については、「中国が地上発射型の中距離弾道ミサイルを約900発保有」していることや、極超音速滑空兵器などミサイル技術の進化によって「迎撃のみではわが国を防衛しきれない恐れがある」ことなどを挙げています。

 しかし、これに対し安全保障担当の元政府高官も「いつ、どの目標を攻撃するかという情報力と十分な弾数はあるのか。たたき漏らせば報復が来る」「敵国内への攻撃だから、ミサイルの撃ち合いを想定することになる」(柳沢協二元内閣官房副長官補、「東京」22日付)と疑問を示しています。

 しかも、「反撃能力」と名称を変えたものの、相手国から実際に攻撃を受けた場合の反撃だけが想定されているわけではありません。自民党安保調査会の小野寺五典会長(元防衛相)は、相手国が攻撃に「着手」したと認定すれば攻撃は可能だと説明したと報じられています。そうなれば、国際法違反である先制攻撃との区別も事実上不可能です。

 攻撃対象に「指揮統制機能等」も含むと明記されたことも重大です。攻撃目標が相手国の軍司令部だけでなく、政権中枢などに際限なく拡大する恐れがあります。

 メディアから「専守防衛の原則から逸脱するとともに、軍拡競争により、かえって地域の不安定化を招く恐れがある」(「朝日」23日付)「反撃能力を抑止力として振りかざせば、地域での軍拡競争を過熱させかねない」(「毎日」同日付)と懸念が上がっているのは当然です。

軍事費倍増、生活圧迫も

 提言が「NATO(北大西洋条約機構)諸国の国防予算の対GDP(国内総生産)比目標(2%以上)も念頭に…5年以内に防衛力を抜本的に強化するために必要な予算水準の達成を目指す」としているのも看過できません。日本の軍事費がGDP比2%以上になれば、10兆円以上に倍増することになります。国民生活関連予算が大きな圧迫を受けるのは必至です。

 日本の軍事大国化や海外での戦争に道を開くことは、東アジアの緊張を高める逆行です。重要なのは、国家間などの紛争を戦争にしないことです。憲法9条を生かした外交で平和な国際環境をつくり出すことに力を尽くす時です。


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