2022年4月6日(水)
主張
異次元緩和10年目
実体経済支える政策に転換を
日本銀行の黒田東彦総裁のもと2013年に開始された量的・質的金融緩和(異次元緩和)が4日で10年目に入りました。異次元緩和は、安倍晋三首相(当時)の経済政策アベノミクスの柱のひとつです。物価が2%上昇するまで金融緩和を続けるというものです。日銀が金融市場で国債や、大企業の株式で構成する投資信託(ETF)を買い、資金注入してきました。潤ったのは、大企業と富裕層ばかりです。さらにいま超低金利政策が円安を加速させ、食料やエネルギーなどの相次ぐ値上げを助長するなど弊害があらわです。
国民苦しむ円安・物価高
円安は、大企業を中心とした海外進出企業に恩恵をもたらす半面、輸入資源を使う国内産業や国民の生活に打撃を与えています。ロシアのウクライナ侵略の影響による輸入品の高騰が国民負担へのさらなる不安を広げています。
ところが、黒田総裁は「わが国の企業が海外で生産をして、本社に送金される円建ての収益の金額は、円安によってむしろ拡大する」「円安になることは、むしろ日本の経済・物価にとってプラスになるという基本的な構図は変わっていない」(3月18日記者会見)と語り、政策を見直そうとしません。
同会見で黒田総裁は、「金融が緩和された状態で経済が成長し、企業収益も拡大して賃金も上がっていく中で、物価が上がっていくことが重要」と述べました。
金融緩和で経済が成長すれば、賃金も上がるというのは「トリクルダウン」(したたり落ちる)理論への固執です。
異次元緩和で実際に起きたのは大企業と富裕層・大株主が大もうけしただけです。株価は9年間で2倍になり、大企業の多くが過去最高益などの収益拡大をしました。一方、賃金は上がらず、日本経済は低迷しました。「トリクルダウン」は起きなかったのです。
政府が、労働法制の規制緩和を進め、ギグワークやシフト制などの無権利状態の働き方や、リストラを放置してきたことが要因です。非正規労働者の増加などは賃金の低下を招きました。これでは、消費需要は拡大せず、経済成長も見込めません。
量的緩和による超低金利は、株高と富裕層の投機をもたらし、マンションバブルなどを引き起こしてきました。
2%の物価上昇が目標だということが、そもそも逆立ちしています。賃上げなしでの物価上昇では、国民の暮らしはいっそう苦しくなります。金融緩和で投機とバブルをつくり出し、経済格差を広げた異次元緩和の失敗は明らかです。ここから転換するには、労働者の賃金を上げるなどの実体経済を良くする政策が必須です。
本格的賃上げ支援こそ
大企業(資本金10億円以上)は内部留保を12年から20年にかけて130兆円増やし、466兆円にしています。ため込まれた内部留保への課税が不可欠です。大企業には賃上げ分の課税控除で、中小企業と中堅企業には、新たな税収を使った社会保険負担の軽減などを行うことで、大企業でも中小企業でも賃上げがすすむ土台をつくることができます。
物価高騰のさなかにさらなる円安を加速させる金融政策は国民を苦境にたたせます。破綻が明白な異次元緩和はやめるべきです。