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2022年4月5日(火)

主張

キーウ近郊の惨劇

市民殺害は断じて許されない

 ロシア軍がウクライナの占領地で市民を殺害したとして、国際社会に衝撃が走り、「戦争犯罪」との非難が高まっています。ロシア軍が撤退した後の首都キーウ(キエフ)近郊で民間人とみられる遺体が数多く見つかり、欧州連合(EU)などはロシアへの追加制裁発動の準備に入りました。民間人殺害は断じて許されない、国際法違反の非人道的行為です。

無差別殺傷の地雷も設置

 海外からの報道によると、キーウ近郊まで侵攻していたロシア軍の部隊は、ウクライナ軍の抵抗を受けて撤退を進めています。ウクライナ政府は2日、キーウ周辺全域を奪還したと発表しました。

 ところが、キーウの北西にあるブチャにメディアの記者が入ったところ、軍服を着ておらず、武器も持っていない、市民とみられる人々が路上で多数死亡しているのが発見されました。

 「道のあらゆる場所に、遺体が横たわっていた。建物の地下室では体の一部が切断され、拷問されたとみられる子どもの遺体も」「ある人は自転車に乗ったまま横倒れに、またある人は買い物袋を握りしめ、…路上で息絶えていた」と報じられています(共同通信、沖縄タイムス4日付などから)。

 ブチャの市長は300人以上が殺され、「手を縛られ、頭を撃たれた人もいる」と告発しており、処刑が行われた可能性もあります。

 ウクライナの司法当局は3日、ブチャを含むキーウ近郊の複数の地域で計410人の遺体を発見したことを明らかにしました。行方不明者もおり、実際にはさらに多くの死者がいるもようです。

 ゼレンスキー大統領は3日の米テレビのインタビューで「ジェノサイド(集団虐殺)だ」と厳しく非難しました。

 ウクライナ情勢をめぐっては、3月24日の国連総会緊急特別会合で、「ウクライナ侵略の人道的帰結」と題する決議が140カ国の多数の賛成で採択されています。

 決議は、ロシア軍の即時・完全・無条件の撤退を迫った3月2日の総会決議の完全履行を求めるとともに、ジュネーブ諸条約等の国際人道法の尊重、民間人や病院等民間施設の保護など、深刻な人道危機を打開することを強く要求していました。キーウ近郊での民間人殺害は、こうした国際社会の要求に真っ向から背くものです。

 ロシア軍が撤退した地域に地雷を設置したことも重大です。対人地雷は非戦闘員である市民にも無差別に被害を与えるため、国際条約で使用が禁止されています。

 しかも、「遺体に爆弾が仕掛けられ、わずかな動きで爆発する恐れがあり、容易に収容できない」(前出の共同通信の記事)事態と指摘されています。遺体を収容しようとする人々を標的にする野蛮な行為です。

問われる岸田政権の態度

 岸田文雄首相は今回の事態を受け、ロシアに対する追加制裁について「国際社会としっかり連携しながら、わが国としてやるべきことをしっかり行っていきたい」と述べました(4日)。

 岸田政権はこれまで、2022年度の政府予算にロシアへの経済協力プランの費用21億円を計上するなど、国際社会の連携に水を差す姿勢も示してきました。今後、どのような態度を取るのかが厳しく問われます。


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