2022年3月29日(火)
論戦ハイライト
参院決算委 田村副委員長の質問
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日本共産党の田村智子副委員長は28日の参院決算委員会で、物価高のなか4月から減額となる公的年金の制度的欠陥を指摘し、減らない年金制度へと変えるよう提案しました。また、大学の財政基盤を掘り崩したことが日本の研究力を危機的状況に追い込んだことを指摘。「任期付き」研究者が大量に「雇い止め」されようとしている問題も取り上げ、政府の姿勢を追及しました。
年金の減額
田村「減らない制度へ変えよ」
首相「この仕組みは政府として尊重」
ロシアによるウクライナ侵略戦争でエネルギーや穀物価格など、さらなる物価急騰が懸念されています。
田村氏は物価について、ウクライナ侵略の影響が出る前から食パンはプラス8・2%、食用油はプラス29・8%、電気代はプラス19・7%となり「価格転嫁できない」「これ以上食費をどうやって節約するのか」などの声が寄せられているとして、国民全体に届く暮らしの支援策をどのように検討しているかと追及。岸田文雄首相は「緊急対応策を4月末までに取りまとめたい」としか答えませんでした。
田村氏は、今後の物価高によって年収300万円未満の世帯では消費税8%への引き上げ時と同程度の負担率になるというみずほリサーチ&テクノロジーズの推計を示し、消費税の緊急減税を検討すべきだと迫りました。
さらに、物価高が暮らしを直撃している時に岸田政権は4月から公的年金を0・4%減額しようとしていると批判。直近6カ月の消費者総合物価指数は前年同月比で上がり続けているにもかかわらず、岸田首相は1月の本会議で「物価・賃金がマイナスとなったことを反映した」などと述べたとして、次のようにただしました。
田村 物価のどこがマイナスなのか。
首相 2021年の物価変動率がマイナス0・2%。計算に基づくものだ。
田村 年金引き下げのもとになった21年の物価指標は、スマートフォン料金値下げの影響だ。
田村氏は、物価高に加え、実質賃金は消費税増税で下がり、賃金指標はコロナの影響でさらにマイナスとなっており、生活実態と大きくかい離していると指摘。年金を減らしながら自民・公明党が政府に、年金生活者へ5000円を支給する臨時給付金を求めるのは筋が通らないと批判しました。
田村 物価が上がっても年金が減るという制度の欠陥を認め、減らない年金制度へと変えることではないのか。
首相 この仕組みは政府として尊重しなければならない。
田村氏は、この20年間、年金は名目で3・3%も減り、政府のモデル世帯(夫婦2人で月22万円)で、年9万円も減額したと指摘。一方、年金から天引きされる医療・介護の保険料などは驚くほど負担増だとして、大企業・富裕層に税金も社会保険料も応分の負担を求め、年金・社会保障を立て直すことこそ暮らしも経済も立て直す道だと訴えました。
研究力後退
田村「研究者雇い止め放置か」
文科相「法人が適切に定めたものだ」
田村「文科省が指導監督しなくては」
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田村氏は、日本の研究力が20年近く低迷しているとして、大学への運営費交付金の削減を止めるよう求めました。
田村氏は、研究力を図る指標の一つとされる論文数が日本は2000年代半ばから減少していると指摘。「運営費交付金が減らされ、04年度と比べて自由に使える研究予算、人件費などは1割以上減ったままだ。大学の財政基盤を掘り崩したことが日本の研究力の低下をもたらした」と強調しました。
小林鷹之科学技術担当相は「外部資金獲得の経営基盤の強化や資金の効率的・効果的な活用を促す」などと答弁。田村氏は「ごく一握りのトップだけ強化しても全体の強化にはならない。一部の大学や研究を『選択』して予算を『集中』させる、安倍政権以降やってきた結果が今日の低迷だ」と批判しました。
そのうえで田村氏は、国立大学に勤める40歳未満の研究者のうち7割近くが非正規だと告発しました。
田村 運営費交付金の削減がそのまま人件費の削減にもつながっている。
末松信介文部科学相 運営費交付金のみならず、競争的な研究費や民間から人件費をねん出する取り組みの周知をはかりたい。
田村氏は競争的な資金は期間限定だと指摘。「基盤的経費を削減したままでは若手研究者は育たない」との科学者の声を無視した科学技術政策では、研究力の低迷は克服できないと訴えました。
さらに、いま国立大学や国立研究機関の任期付きの研究者が大量に雇い止めされようとしています。
田村氏は、13年4月改定の労働契約法特例で研究者は通算10年を超えると本人の申し出で無期雇用に転換されるため、理化学研究所では10年を超える手前で多くの「任期付き」研究者を雇い止めしようとしていると指摘。「上限10年」とされた研究者296人の中には研究チーム(ラボ)を率いるリーダーが60人以上おり、チームリーダーが「雇い止め」になればラボそのものが消滅し、約600人が「雇い止め」の危険があると告発しました。
田村氏は、理研で新型コロナウイルス関連の研究も行う神戸市の生命機能科学研究センター(BDR)では24のラボが解散、うち17は移転先も決まらないとして「これまでの研究、何年も積み重ねてきた研究設備もすべて廃棄となったらあまりにも大きな損失だ」と批判しました。
田村 こんな乱暴な研究者の「雇い止め」、研究チームの廃止を放置するのか。
文科相 労働関係法令に基づいて、法人において適切に定めたものと承知している。
田村 文科省が指導監督しなくてどうするのか。
田村氏は、国立大学でも理研と同じことが起こっているとして、国立大学で18年勤務してきたテクニカルスタッフが「いったん辞めて半年明けて、クーリングオフして戻ってきたら、また10年雇えるから戻ってくるように」と言われたことも告発。「人件費を抑える、雇用の流動化だという政策が研究にまでもちこまれた。この新自由主義政策こそが日本の成長する力を奪っている」と、政策の抜本的転換を求めました。
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