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2022年3月21日(月)

主張

消費税インボイス

零細業者苦しめる制度中止を

 消費税の「インボイス」(適格請求書)制度が2023年10月から導入されることに自営業者などから不安と批判の声が上がっています。国税庁は21年10月から事業者登録の開始などインボイス発行へ向けた準備を始めています。インボイスが導入されれば、これまで消費税の納税を免除されていた小規模の事業者や個人事業主に新たな税負担がのしかかります。新型コロナ感染の長期化などで収入が減って苦境に立つ事業者に追い打ちをかけるものです。岸田文雄政権は国民の不安を受け止め、導入を中止すべきです。

廃業・倒産が増加の恐れ

 物を売った事業者は、客から受け取った消費税から仕入れにかかった消費税を差し引き納税します。いま帳簿で行っている計算を、インボイスを使って納税することが義務付けられます。インボイスには取引の金額、年月日、品目、消費税額などのほか、税務署が割り振った事業者ごとの登録番号が記載されます。インボイスは7年間保管しなければなりません。

 日本商工会議所の調査(21年11月公表)からは「そもそも制度が複雑でよく分からない」42・4%、「複雑で事務負担に対応できない」49・2%など現場が煩雑さに困惑する状況が浮かんできます。

 深刻なのは事業者の税の負担増です。現在、年間売上高1000万円以下の業者は消費税納税を免除されています。しかし、インボイスの導入は、消費税の価格転嫁が困難な零細業者にも課税業者になることを迫ります。

 インボイスは課税業者しか発行できません。いまは、課税業者が免税業者から仕入れた場合、消費税がかかっているとみなして控除できます。今度はインボイスのない仕入れでは消費税額の控除は認められません。そうなると、多くの課税業者は免税業者との取引をやめることが想定されます。それを避けるために課税業者になるしかありませんが、赤字経営になっても身銭を切って消費税を納めざるをえなくなります。

 すでに経営状態が苦しい事業者の倒産や廃業が相次ぐことが強く懸念されています。

 日本出版者協議会は2月3日、インボイス制度の中止を求める声明を発表しました。出版には著者やライター、編集者、校正者、デザイナー、カメラマンなど多数のフリーランスが関わり、その多くは年間売り上げ1000万円以下の免税業者です。声明は、出版社がこれまで控除できた分を負担するのは困難である一方、フリーランスに課税業者になるように求めるのも難しいことなどを挙げ、多くの事業者に負担を強いるインボイスを批判しています。

影響はさまざまな分野に

 インボイス制度の影響を受けるのは、個人タクシー、文化・芸術、シルバー人材センター、農家をはじめ、ウーバーイーツなどの宅配パートナー、電気・ガスの検針員など多岐に上ります。その数は1000万人前後ともされます。しかし、少なくない関係者は、自分が免税業者との自覚がないままでいることが予想されます。このまま実施すれば混乱は必至です。

 インボイス導入は19年の消費税率10%への引き上げと合わせて決められたものです。消費税減税・不公平税制是正とともにインボイス中止を強く求めましょう。


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