2022年3月17日(木)
値上げ加速
小麦供給に懸念
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商品やサービスの価格引き上げが止まりません。3月に入ってからも次々と値上げが発表されています。ロシアのウクライナ侵略で商品・サービスの値上げが引き続く恐れもあります。
農林水産省は政府が買い付けて国内の製粉業者に売り渡す輸入小麦の価格を4月1日から17・3%引き上げると発表しました。同省の試算によると食パン1斤は2・6円、家庭用小麦粉は1キロ12・1円などの値上げとなります。
小麦の売り渡し価格は過去2番目の高水準。足元での値上げの主因は干ばつによる北米産の不作などを背景にした穀物相場の高止まりです。同時に、ロシアとウクライナは両国合わせて世界の小麦輸出量の3割弱を占め、今後の供給が懸念されることも値上げを加速しています。
洋菓子を販売する銀座コージーコーナーは4月1日販売分から生菓子と焼き菓子の計18品目を値上げすると発表しました。苺のショートケーキを420円から430円に引き上げるなど、税抜本体価格を平均2・7%引き上げます。
湖池屋はスナック菓子の一部商品について、価格を据え置いた上で内容量を減らす、「実質値上げ」を6月6日発売分から実施すると発表しました。「スティックカラムーチョ ホットチリ味」は105グラムから97グラムに内容量を変更するなど、12品目について6・7~8・7%の値上げとなります。
消費者・業者を直撃
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味の素はうま味調味料「味の素」など家庭用製品の25品目を6月1日納品分から値上げすると発表しました。値上げ幅は2~13%。「味の素」(50グラム袋)は想定販売価格を178円前後から192円前後に引き上げます。
値上げが続くのは食料品・調味料だけではありません。岩谷産業はカセットコンロとカセットガスをそれぞれ値上げすると発表。花王は子ども用紙おむつ「メリーズ」の値上げを発表しました。
原油価格も高騰しています。そのあおりを受けて国内でのガソリン価格は14日時点で10週連続で値上がりしました。
「影響ある」77%
原材料の値上げが中小業者の営業を直撃しています。民間信用調査会社、帝国データバンクが2月9日に発表した「原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査」によると、自社の商品やサービスについて、原材料の不足や高騰の「影響がある」と答えた企業は77・3%にのぼります。そのうち、「価格転嫁はすべてできている」と答えたのはわずか4・1%。「価格転嫁はまったくできていない」は36・3%でした。
2月の「景気ウオッチャー調査」(内閣府)には原材料費高騰による悲鳴が寄せられています。「原材料価格が値上がりし、ここにきてフィルム、パック、添加物といった製品原価にかかわる物が全て値上げとなっている。商材自体はまだ値上げができていないので、かなり大変な事態になってきている」(甲信越・食料品製造業)、「需要減少に加え、原材料の値上げや燃料の価格高騰により経営状況が悪化している」(東北・窯業・土石製品製造業)など、深刻な状況です。
消費者の心理も冷え込みます。内閣府「消費動向調査」によると消費者の心理の明るさをしめす消費者態度指数は2月35・3と3カ月連続で悪化しました。1年後の物価見通しを「上昇する」と答えた割合は2ポイント上昇の91・7%で前月に続き、過去最悪を更新しました。
値上げの理由として共通するのは原材料や物流費の高騰です。昨年からつづいてきた需要と供給の不均衡による資源・原材料高騰に加え、ロシアのウクライナ侵略が拍車をかけています。さらに資源や原材料の多くを輸入に頼る日本では為替相場が円安傾向になると輸入価格が一層高騰することになります。
高値が続く恐れ
ロシアは天然ガスや原油、石炭などを世界に輸出する「資源大国」です。国際エネルギー企業BPの「世界エネルギー統計レビュー2021年版」によると、ロシアの世界輸出に占める割合は原油12%、石油製品10%、天然ガス25%、石炭18%を占めます。また、ステンレスの製造に使われるニッケルは世界生産の7%、輸送用機器や包装などに使われるアルミニウムは同6%を占めます。戦闘の激化や長期化でさらに需給が逼迫(ひっぱく)すれば、高値が続く恐れもあります。
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