2022年2月24日(木)
主張
「敵基地攻撃」能力
憲法が禁じた戦争そのものだ
岸田文雄政権は戦後初めて、外国のミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃」能力の保有について検討を進めています。この間の国会審議では、岸信夫防衛相が他国領空内に自衛隊機が侵入して爆撃することも「排除しない」と答弁するなど、憲法が禁じた戦争につながる危険なたくらみであることが浮き彫りになっています。
相手国での空爆排除せず
岸防衛相の答弁は、立憲民主党の長妻昭議員が16日の衆院予算委員会第1分科会で行った質問に対するものです。長妻議員は、「敵基地攻撃」の手段として「相手国の領空内に戦闘機が入って爆撃をする。爆弾を落とす。これについては(検討の選択肢から)排除するのかしないのか」と質問しました。これに対し岸氏は「排除しない」と明言しました。
攻撃対象が「敵基地」に限定されないことも重大です。
岸田首相は18日の衆院予算委で、「敵基地攻撃」の名称変更について「検討」を表明しました。自民党の岩屋毅議員が「敵基地とは一体、何を指すのか。もうリアリティーをなくしてきている」と質問したのに答えました。ミサイルは固定された基地からでなく、発射台付き車両などから撃たれることを念頭に置いたものとされます。
自衛隊トップだった元統合幕僚長の折木良一氏は「いわゆる敵基地攻撃能力については『反撃能力』という表現を提案する。敵基地攻撃と言ってしまうと、文字通りに相手の基地をたたくイメージが強くなりすぎる」とし、「反撃能力とは相手の基地に限らず、指揮・統制施設や通信施設などへの攻撃も含む」と指摘しています。(「日経」1月12日付)
安倍晋三元首相も昨年11月の講演で、「敵基地攻撃」能力という表現は「あまり適切ではないのではないか」とし、「敵基地だけに限定せず、『抑止力』として打撃力を持つこと」を主張しています。米国は「反撃能力によって相手を殲滅(せんめつ)します」とし、これこそ「抑止力」だと語っています。
「敵基地攻撃」能力とは、相手国の指揮・統制機能の中枢をたたく戦争遂行能力であり、相手国を殲滅するような「打撃力」=「反撃能力」に他なりません。これが、戦争放棄をうたい、海外での武力行使を禁止した憲法9条に真っ向から反するのは明白です。
政府はこれまで「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない」(1959年3月19日、衆院内閣委、伊能繁次郎防衛庁長官)としてきました。「専守防衛」とは「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土およびその周辺において防衛を行うこと」(72年10月31日、衆院本会議、田中角栄首相)とも答弁しています。
安倍元首相も禁止と答弁
安倍氏自身、首相の時には「外国に出かけていって空爆を行う…あるいは撃破するために地上軍を送って殲滅戦を行うことは(自衛のための)必要最小限度を超えるのは明確であり、(憲法で)一般に禁止されている海外派兵に当たる」(2015年7月3日、衆院安保法制特別委)と答えています。
憲法違反の「敵基地攻撃」能力保有の検討をやめさせる運動と世論を広げることが急がれます。