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2022年2月21日(月)

主張

ギグワーカー

「使い捨て」なくす仕組み急げ

 第166回芥川賞を受賞した砂川文次さんの『ブラックボックス』は自転車便メッセンジャーの過酷な労働を描いています。こうした「ギグワーカー」と呼ばれる労働者の無権利状態を放置することはできません。欧州連合(EU)は権利を守るための法制化に乗り出しました。日本でも、労働者が使い捨てにされる働き方をなくす仕組みが求められています。

EUは改善に向け法整備

 「ギグ」はもともとジャズなどで1回限りの演奏を意味する英語です。転じて、短期、単発の労働を指す言葉として使われています。多くは、インターネットを使って事業を展開する「プラットフォーム企業」からスマホのアプリを通じて仕事を受け、仕事ごとに報酬を得る働き方です。「プラットフォーム労働」とも呼ばれ、日本では料理の宅配代行サービスがよく知られています。

 企業の指揮・命令を受けて働いているのに独立した個人事業主とされ、労働基準法などで定められている権利を保障されません。

 労働者なら賃金の最低額が保障され、拘束時間内に仕事を待機する分も賃金が支払われます。ギグワーカーはすぐ配達に出発できるよう待機しても、その分は無報酬です。突然、一方的に契約を終了させられることもあります。

 最近、各国でギグワーカーの権利確立を求める運動が広がっています。英国では昨年、米配車大手ウーバーと契約している運転手を、雇用関係にある「従業員」と認める判断を最高裁判所が出し、最低賃金や有給休暇、団体交渉権をかちとりました。スペインでは食事宅配の配達員を従業員とする法律が施行されました。

 こうした動きを受けてEUの執行機関、欧州委員会は昨年12月、「プラットフォーム労働の労働条件改善に関する指令案」(法案)を発表しました。プラットフォーム企業が報酬を決めたり、労働の成果を評価したり、仕事の進め方に規則を設けたりしている場合、企業は「雇用主」にあたり、労働者と同じ権利を保障しなければならないとしています。法案は今後、欧州議会や閣僚理事会で審議され、成立すれば各国政府が国内法を整備します。

 日本では昨年、政府がフリーランスについてのガイドラインを定めましたが「労働者性」の判断基準が狭すぎると批判されています。IT(情報技術)の発達で時間、場所を選ばず働かされることが横行しているのに、働く時間や場所が指定されていることを基準に挙げています。現実に合わない物差しは改善する必要があります。

労働者として権利保障を

 16日には全労連が、個人事業主扱いの労働者の保護を政府に申し入れました。国会では日本共産党議員が、ギグワーカーの権利保障を繰り返し政府に迫っています。

 労災保険については昨年から、自転車を使った運送業者に自営業者向けの特別加入が認められるようになりましたが、保険料は自己負担です。雇用主が保険料を負担する通常の労災保険に加入できるようにすべきです。

 一方的な契約打ち切りを抑止することや最低賃金、団体交渉権の保障などが急務です。そのためには名ばかりの個人事業主扱いにされている働き手を労働者と認める法整備が欠かせません。


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