2022年2月19日(土)
主張
岸田首相の会見
深刻な事態の打開策が見えぬ
岸田文雄首相は17日、新型コロナウイルス対策の新たな方針について記者会見しました。まん延防止等重点措置は、17道府県で延長する一方、5県は20日で解除します。「水際対策」緩和も打ち出しました。感染状況は依然深刻で、重症者は増加し、1日あたりの死亡者数は過去最多となっています。救急搬送困難事例も高水準で推移し救急医療のひっ迫も続いています。しかし、首相には危機感がありません。3回目のワクチン接種の大幅遅れなどにも反省を示しません。厳しい現実を直視し、事態打開の全体像を直ちに示すことが首相の責任です。
危機を共有する立場欠如
首相は会見で「警戒感を緩めることなく、最大限の緊張感を持って対応していく」と述べました。しかし、外国に比べ感染状況は低いレベルにある、感染ペースが落ち着き始めている、病床に余力があるなどとして、「出口」への準備を進める立場を強調しました。
厚生労働省の専門家組織の16日の会合の分析では「ピークを越えた」としつつも、高齢者を中心に重症者・死亡者が今後増加する危険があることを警告しています。首相は会見で、それらの点にまともに言及しませんでした。楽観できない事実を率直に語り、危機感を国民と共有しなければ、有効な対策をとることはできません。
全国知事会が15日発表した「全国的な感染拡大の早期抑制に向けた緊急提言」は、「感染収束の見通しが立たず、多くの地域で保健・医療体制が危機的な状況に陥りつつある」と訴え、危機が国民に正しく認識されるように国として強く発信することを要請しています。首相はこの要求を真剣に受け止めるべきです。
知事会の提言は、岸田政権が昨年11月に決めたコロナ対策の「取組の全体像」の見直しを含めた全般的な対処方針の明確化も求めています。オミクロン株がまん延する前に策定された「全体像」では、感染実態に即した対応はできないという切実な声です。それにもかかわらず岸田首相は「これからもこの『全体像』をしっかり説明する」(会見)と見直しの要求に応えませんでした。
記者から、3回目ワクチン接種が世界的に見て低水準にあることを指摘されると「加速化に向けて努力する」と弁明しつつ、「3回目接種を先行した国でも感染者数は大変増えている。わが国の感染者数は格段に少ない」と開き直りました。2回目からの間隔は原則8カ月以上という医学的根拠のない方針に政府が固執したことが、接種遅れの大きな要因です。その誤りを認めないのは大問題です。
「丁寧」とは程遠い姿勢
岸田首相が記者会見をしたのは1月4日以来です。オミクロン株の感染がかつてない規模で急拡大する「第6波」のもとで国民の苦境が続いていたにもかかわらず、「会見の空白期間」が長期にわたったことに批判が上がっていました。首相自ら感染状況や対策を説明し理解と協力を求める機会を設けてこなかったことは、危機時のリーダーとしての責任放棄です。
事態の変化に応じた対策の全体像を示さず、成り行き任せになっている岸田政権に国民の不信と不安は消えません。就任時に「丁寧な説明」を売り物にしていた首相の姿勢が問われます。