2022年2月17日(木)
主張
回復しないGDP
「賃金上がる国」への転換こそ
15日に公表された2021年10~12月期の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質でコロナ危機前の水準を下回りました。感染「第6波」に見舞われた22年1~3月期はまたマイナスが予想されます。ガソリン、食品などの値上がりによる家計への打撃も深刻です。生活や中小企業の営業への支援強化とともに、国民の所得を向上させる経済改革が差し迫った課題です。
成長できない日本の弱さ
21年10~12月期実質GDPは前期の7~9月期と比べて年率換算で5・4%増えました。感染「第5波」でマイナス2・7%だった前期と比べて、感染が減った10~12月期にプラスになるのは当然です。むしろ感染状況しだいでGDPがプラスとマイナスを繰り返し、一向に回復の兆しが見えないところに、もともと「成長できない国」になっていた日本の弱さが表れています。
実額で見ると、10~12月期の実質GDPは年換算で541兆円でした。コロナ危機も、消費税率10%への増税による消費の落ち込みもなかった19年7~9月期の558兆円から後退したままです。GDPの5割以上を占める個人消費は消費税10%増税前の300兆円台を下回っています。
21年通年の成長率は前年比1・7%増でした。20年に4・5%減となった大幅な下落を取り戻せずにいます。21年の成長率が5%台の米国やユーロ圏と比べても日本の低迷は際立っています。
経済が成長せず、危機に弱い根本には賃金が上がらない日本の異常さがあります。1人当たりの実質賃金はピーク時の1997年と2020年を比べると、64万円も減ってしまいました。
1990年代後半以降、人件費の削減を狙う大企業・財界の要求にこたえて歴代自民党政権が労働法制の規制を緩和してきたことで低賃金の非正規雇用が増え、賃金が押し下げられました。年収200万円未満のワーキングプア(働く貧困層)は約1200万人にのぼります。国民の所得が増えず、格差と貧困が広がったことで日本経済の弱体化が進みました。
賃金が上がらない一方で21年秋以降、物価高が国民を苦しめています。12月の消費者物価は前年比で灯油が36%、ガソリン22%、生鮮食品8%の大幅な上昇です。
岸田文雄政権が今実施している経済対策は感染が減っていた昨年秋につくられました。感染がかつてなく広がっている今の事態に対応したものではありません。事業復活支援金の支給額は一昨年の持続化給付金の半分以下です。感染の新たな波に対応した医療体制の強化、暮らしや中小企業への支援策を早急に立てるべきです。
格差・貧困の解消が急務
政治の責任で日本を「賃金が上がる国」にし、格差と貧困をなくしていく取り組みが何よりも重要です。労働法制の規制を強化し、非正規雇用の正規化を進める流れをつくらなければなりません。中小企業支援と一体に最低賃金を全国一律に時給1500円に引き上げることや、男女の賃金格差の解消も急務です。
岸田政権は大企業の利益を優先して雇用の非正規化を進めてきた政治には無反省です。「成長できない」「危機に弱い」日本を変えるために政治の転換が必要です。