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2022年2月16日(水)

主張

診療報酬の改定

医療現場の疲弊打開できない

 公的医療保険から医療機関や薬局に治療や薬の対価として支払われる診療報酬の2022年度の改定内容が決まりました。岸田文雄政権は診療報酬総額を「マイナス改定」にしたため、外来や入院など個々の報酬も現場の切実な要求にこたえない厳しい中身となりました。新型コロナウイルス感染拡大で浮き彫りになった日本の医療体制の問題点は改善されず、脆弱(ぜいじゃく)さに拍車がかかる危険があります。国民の命と暮らしを守る医療を構築するために、現場の実情に合わない報酬設定を改善させるとともに、診療報酬総額を大幅に引き上げることが必要です。

コロナ禍の教訓を学ばず

 診療報酬は原則として2年に1度改定されます。今回はコロナ感染が拡大して以降、初めての改定です。2年にわたるコロナに直撃された医療機関を支えるため、診療報酬総額の引き上げを求める声が現場からは相次いでいました。

 しかし、岸田政権はその願いに逆らい、マイナス改定にすることを22年度予算案で決めました。診療報酬引き下げは5回連続です。総額マイナス改定の下で、9日に決められた個別の改定項目にも矛盾とゆがみが表れています。

 例えば、感染症対策をした診療所向けに新たな加算を設けるとしました。しかし、感染症部門に専任の責任者を置くことを求めるなど一般の診療所としてはハードルが高い要件となっています。加算点数も不十分です。多くの医療機関が全ての患者に感染の疑いを前提に対応している中で、医療機関を要件で差別化するやり方は現場の実態とかみ合いません。PCR検査の報酬も大幅に引き下げたままです。コロナの教訓に学んだ感染症対策とはいえません。

 救急・手術などに対応する急性期病床の認定基準を厳格にします。患者の重症度を測る項目から「心電図モニター管理」を削除しました。そうなると、それまで認められていた急性期としての報酬が算定できなくなる病床が生まれ、医療機関は大幅減収になる懸念があります。医療現場からは、コロナ対応にも支障が出ると反対の声が上がっていました。看護体制の縮小促進につながる問題もあります。狙いは病床削減です。手厚い医療とは逆行しています。

 1度診察すれば一定期間は再診なしに薬局で同じ処方薬を3回まで出す「リフィル処方箋」の導入は医療費削減の狙いからです。受診回数を減少させる方向に誘導したい財務省などの要求で、十分な議論もなく決められました。長期処方には患者にとってリスクがあります。また、コロナ禍という限定付きだった「オンライン診療」の初診利用も恒久的な措置にしました。触診や聴診ができないままオンラインで診察することは不安が残ります。医療の安全を置き去りにしてはなりません。

国民の負担軽減もはかり

 岸田政権が強調する「看護職の処遇改善」も対象はコロナ対応などに限定し、全体の大幅賃上げを求める声に応じませんでした。

 今回の診療報酬改定では医療現場に希望がみえません。国民に安全・安心の医療を提供するためには、社会保障削減路線と決別し、診療報酬総額を引き上げるしかありません。国民の経済的負担が増えないよう、窓口負担の軽減と一体ですすめることが重要です。


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