2022年2月7日(月)
主張
闇の官房機密費
使途隠した税の支出にメスを
菅義偉前政権が発足した2020年9月から退陣までの約1年に支出された内閣官房機密費(報償費)13億円超のうち、官房長官が自由勝手に使える「政策推進費」は12億4000万円にのぼることが本紙調査(3日付)で分かりました。政策推進費は、領収書が不要の“つかみ金”です。菅政権時代の支出先は当時の加藤勝信官房長官しか知りません。政策推進費をはじめとする官房機密費は過去に国会対策やマスメディア対策などに使われたことが判明し、問題になってきました。使途を隠した税金の使い方に批判は絶えません。メスを入れることが必要です。
1日平均313万円使う
官房機密費は国庫から支出されています。政策推進費の他に「活動関係費」「調査情報対策費」があります。ほとんどを占める政策推進費は、官房長官の管理する金庫に入金された時点で支出完了とされます。使い道は官房長官の裁量次第です。
加藤官房長官は菅首相退陣直前の21年10月1日の会見で、同政権下で9月末までに支出した官房機密費は13億3000万円、うち政策推進費は11億5500万円だと明らかにしました。しかし本紙が情報公開請求で入手した資料では、会見当日に8500万円が政策推進費に支出されていました。合わせて加藤氏は12億4000万円の政策推進費を手にしました。
官房長官の金庫の出入金記録によれば12億200万円が使われていました。月9000万円前後の支出です。384日間官房長官をつとめた加藤氏は1日平均313万円を使った計算になります。
21年3月には、1億8630万円の政策推進費が使われていました。年度末に多額の政策推進費が支出される手法は、安倍晋三政権の菅義偉官房長官時代と同じです。いつも年度末に残金がほとんどなくなります。
加藤氏は機密費について「その都度の判断で機動的に使用する経費」と強調します。しかし、年度末に使い切るやり方を「機動的」と説明するには、あまりに無理があります。税金や政治資金の問題に詳しい識者は「私的流用の疑い」を指摘しています。
菅官房長官時代の7年8カ月の政策推進費は86億8000万円でした。菅氏は長官在任中の20年秋、自民党総裁選に立候補しました。同氏は出馬表明前日の9月1日に9020万円の政策推進費を受け取り、首相就任の9月16日までに4820万円を支出しました。国会で「総裁選のために使ったといわれても仕方ない」と追及され、菅氏は否定しましたが、裏付ける証拠は示しません。
“つかみ金”許されない
官房長官経験者が官房機密費を党利党略的に使った実態を生々しく証言した例は少なくありません。菅氏や加藤氏は使途を明らかにすべきです。
最高裁は18年、政策推進費に関する資料の一部開示を命じました。学者や弁護士でつくる市民団体は、政策推進費の目的外支出を明文で禁止し一定期間後に使途を公表するよう政府に申し入れています。「税金の私物化」を許す仕組みをこのままにしておくことはできません。公開のルールづくりはもちろん、国民の不信を招く官房機密費のあり方を根本から問い直すことが不可欠です。