2022年1月27日(木)
主張
2年連続の年金減
暮らし圧迫に追い打ちやめよ
厚生労働省が2022年度の公的年金額を0・4%引き下げると21日発表しました。2年連続の年金カットです。削減幅は21年度の0・1%よりも拡大しました。食料品や灯油代、電気・ガス代などの物価上昇が家計を圧迫している中での年金カットは、高齢者の暮らしに一層の打撃となります。岸田文雄政権は、75歳以上の医療費窓口負担の2倍化も10月から実施する構えです。介護保険料引き上げも繰り返されています。生活実態を踏まえずに、年金削減と負担増を強いることは許されません。
物価上昇にもかかわらず
厚労省は今度の減額によって、40年間保険料を払ったケースで▽国民年金(1人)月6万4816円(259円減)▽厚生年金(平均的な給与の会社員と専業主婦の世帯)月21万9593円(903円減)になると試算します。
減らされる支給額は人によって異なります。保険料未納期間があったり現役時代が低賃金だったりして、低年金にされている高齢者ほど厳しい生活を強いられます。
毎年改定される年金額は、物価と賃金の動向で増減が決まります。今回は、物価の変動率(21年平均)はマイナス0・2%、賃金の変動率(18~20年度)はマイナス0・4%でした。物価よりも賃金の変動率のマイナス幅が大きい場合は、賃金の変動率を年金改定率にするルールのため、0・4%の減額となりました。
しかし、直近の物価は原油高や円安によって値上がりが続いています。21日に総務省が発表した21年12月の全国消費者物価指数は、前年同月比0・5%上昇しました。4カ月連続アップです。生鮮の魚介や果物は9%台値上がりし、灯油代は36・0%増、電気代も13・4%増と暮らしに負担となっています。原材料費の高騰も続いており、物価上昇の流れが収まるきざしはみえません。値上げラッシュのさなかの年金減は生活実態を無視した乱暴なやり方です。
年金減額の指標にした賃金変動率のマイナスもコロナ禍が直撃した20年度の経済の影響を受けたものです。19年に強行された消費税10%増税による需要の冷え込みと経済悪化による賃金下落も反映しています。2~4年度前の賃金動向で、現在の年金額を決めること自体、大きな矛盾です。
20年度の賃金水準は23年度と24年度の年金改定にも指標とされるため、年金額の押し下げが長期化する可能性も指摘されています。年金額削減のルールは16年の安倍晋三政権による年金法改悪で導入されました。国民にもたらす被害はあまりに重大です。今度の年金削減の中止とともに、削減ありきの仕組みを改め、減らない年金に改革することが不可欠です。
地域経済を支える上でも
公的年金は、高齢者の生活の土台であるだけでなく、高齢化が進む道府県では県民所得と家計消費で一定の比重を占めています。厚労省も、年金の「地域経済を支える役割」を認めています。コロナ禍に苦しむ地方をさらに疲弊させる年金削減に道理はありません。
厚労省は年金削減にとどまらず、母子世帯・父子世帯に支給する児童扶養手当や特別障害給付金、被爆者の健康管理手当なども0・2%引き下げる方針です。国民に冷たい仕打ちを続ける岸田政権に代わる政治の実現が急務です。