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2022年1月20日(木)

主張

国交省統計改ざん

国会で徹底した真相の解明を

 国土交通省の建設工事受注動態統計が改ざんされていた問題は、2018年に発覚した厚生労働省の毎月勤労統計の不正に続き、国の統計に対する信頼をまたもや失墜させました。公的統計は行政事務や政策立案の基礎となるだけでなく国民共有の財産です。統計法でも国民の意思決定の基盤となる「重要な情報」と明記しています。徹底的な真相解明が必要です。

二重計上の責任明らかに

 この統計は、建設工事の受注高を把握するため、全国約1万2000の建設業者を対象に毎月行っている調査です。国交省に直接回答する大手業者の分以外は、都道府県を通じて調査票を集めます。集計結果は政府の景気判断や国内総生産(GDP)の作成に使われ、公的統計の中で特に重要な基幹統計の一つに指定されています。

 国交省が依頼した第三者委員会が14日に公表した検証報告によると、00年の統計開始以来、提出期限を過ぎて提出された調査票に記された過去の受注実績を直近の月に合算して書き換えるよう国交省が都道府県に指示していました。13年4月からは調査票を提出していない業者の受注高に推計値をあてはめ、遅れて提出された場合は実績値も合算しました。その結果、受注高が二重に計上され、過大な数値が続くことになりました。

 国交省の担当者や会計検査院がこうした処理の不適切さを指摘していたのに、昨年12月に報道で発覚するまで組織ぐるみで改ざんを行ったことはさらに重大です。

 毎勤統計の不正を受けて、国の統計全体を所管する総務省が基幹統計の一斉点検を依頼した際、国交省は問題を報告しませんでした。19年4月には新任の担当課長補佐が合算をやめるよう提起しましたが、上司の統計室長らは応じなかったと言います。

 20年1月には国交省が都道府県に書き換えの停止を指示する一方、数値が急に変動しないよう合算を前月分だけにし、二重に計上する数値を減らす操作を始めました。発覚を恐れたデータ改ざんです。この決定には局長級の審議官も加わっていました。

 報告書は二重計上について、大きな数字を公表しようとする「作為」は認められず、「時の政権のために」したことや「介入があったこと」は確認できなかったとしています。しかし改ざんや隠蔽(いんぺい)の動機を明らかにせず、作為がなかったと言っても通用しません。

 GDPに与えた影響も明らかにされていません。GDPが建設統計の水増しに影響されていたとすれば、政府の経済運営の検証にも支障をきたします。

「第三者」検証では不十分

 報告書は国交省の法的責任に一切触れていません。統計法は基幹統計を作成する者が統計を「真実に反するもの」にした場合、6月以下の懲役または50万円以下の罰金を科すと定めています。基幹統計はそれほど重いものです。

 岸田文雄首相は施政方針演説で陳謝しましたが、第三者委員会の不十分な検証で済ませるわけにはいきません。以前から改善を求められてきた統計専門職員の不足やチェック体制の弱さに政府が真剣に対応してきたかも問われます。

 野党は国会での集中審議を求めています。改ざんの経過や原因、責任を究明することは再発防止の大前提です。


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