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2022年1月20日(木)

看護師紹介料1人76万円

20年度 275人で2億900万円

医療機関の経営圧迫 民医連136病院

 既卒の看護師275人を確保するため医療機関が民間紹介事業者に払った手数料が総額約2億900万円に上った―。そんな実態が全日本民医連の調査で分かりました。1人当たりの平均額は約76万円です。高額な紹介料が経営を圧迫するなど問題になっています。(小林圭子)


 看護師の募集は、病院がホームページなどで直接募集するほか、民間の有料紹介とハローワークなどの無料紹介があります。

 調査は昨年9月に実施したもので、民医連に加盟する全国136の病院が回答。約半数の病院が有料紹介を利用しており、2020年度に既卒で入職した看護師のうち、民間事業者の紹介は275人で30%に上ります。

 紹介料は事業者が定め、看護師の年収の20%程度が一般的だといいます。

 北海道民医連の須田倫子副会長(看護師)は「現場は安定して夜勤者を確保することが大変困難です。夜勤が可能で、一定の経験を積んだ人材を求めると年収も高く、紹介料も高額になる」と話します。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、医療機関の経営は悪化しています。民医連が30の法人を調査(21年度上半期)したところ、コロナ禍前の19年度比で延べ患者数は、入院96・1%、外来91・6%と減少しました。

 須田さんは「コロナにより経営が厳しい中で、紹介料が大きな負担になっています。看護師の紹介が有料であることが問題です。無料で紹介するハローワークなど公的職業紹介の機能を拡充すべきです」と語ります。

写真

(写真)「高額な手数料を請求された」「採用者がすぐ辞めてしまった」-。医療機関などから民間紹介事業者とのトラブルの報告を受け、厚生労働省が作成したチラシ

看護師・病院のためにならず

公的紹介の充実必要

 看護師不足が深刻な医療現場では、民間紹介事業者に高額な紹介手数料を払ってでも職員を確保しなければならない状況です。

 須田さんは、民間を使わざるをえない現状をこう語ります。「公的な紹介事業者と比べ民間は紹介数が圧倒的に多い。民間の場合、求職者はインターネットで手軽に登録でき、その後は業者がやってくれる。求職者が民間に登録するのは当然だと思う」

 民間事業者が多数ある札幌市では、ハローワークからの紹介は年間1、2件ほど。一方、民間からは毎日のように紹介の電話があります。民間事業者の競争も激しくなり、求職者のメンタルサポートや就職後のアフターケアをするところもあるといいます。

規制に後ろ向き

 制度上、紹介料の上限はありません。上限の設定について、昨年6月に閣議決定された答弁書には、紹介料は労働市場の需給により変動すると説明。「慎重な検討が必要である」と後ろ向きな姿勢が示されています。

 公的事業としては、ハローワークのほかに都道府県の看護協会が運営する無料のナースセンターがあります。職員は基本的に同協会の看護師であるため、現場を理解しミスマッチが起きづらいといいます。しかし、民間業業者より担当職員の数も少なく紹介数もわずかだといいます。

 調査結果をまとめた全日本民医連の宮川喜与美理事(看護師)は、民間の有料紹介事業について「退職の面倒までみる業者もある。辞めてもらった方が次を紹介できる。人を動かしてもうける仕事だ。医療機関と電話やメールだけで対応する業者もいる。チームで信頼関係を築きながらケアする看護の仕事とは相いれない」と語ります。

新卒者も増える

 民間を利用する新卒者も増えています。20年度は新卒者に占める割合が0・8%(8人)で、前年比で倍増しました。紹介料の総額は約560万円です。

 宮川さんは「求職者がインターネットで資料請求すると知らぬ間に業者登録するよう巧妙に設定されている。新卒者が就活で何も分からず登録したりすることも増えている」として、こう指摘します。

 「民間事業者に支払う仲介料は、求職している看護師のためにも、募集する病院のためにもならない。ハローワークやナースセンターの機能を拡充し、求職者のサポートを手厚くすべきです」


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